2016-11-18

オンフルールの空の王(前編)



クロード・モネに絵の手ほどきをした「空の王」ウジェーヌ・ブーダンは、エリック・サティとならんでオンフルールを代表する芸術家。印象派好きの人にはよく知られた話ですが、ある日ル・アーヴルの文具兼額装屋でモネの描いた漫画をたまたま目にしたブーダンは、1年以上にわたって彼を誘いつづけ、絵筆を持ったことのないこの17才の少年を自分の画塾に入れます。これ、モネは本気で嫌だったらしい。にもかかわらず、最初の授業で川辺に連れ出されたモネは「絵を描くとはこういうことだったのか!」といきなり開眼してしまうんですね。

ブーダンの教えた要点はふたつ。ひとつは戸外で制作すること。もうひとつは空をよく見て、過ぎ去ってゆく瞬間を克明にとらえること。チューブ入りの絵の具が考案されたとはいえ、自然をじかに目で見て彩色するのがまだ画期的だった時代に、ブーダンはデッサンを飛ばしてその画期的次元からモネをスタートさせたのでした。



モネの先生であることが一目瞭然の画風。ブーダンの主なモチーフは海、港、人や牛の群景で、構図はそれらのモチーフを水平線あるいは地平線込みで描き、上半分はほとんど空といったものが大半です。とりわけ得意なのが青い空と白い雲。作品を眺めるたび、空気の流れやその温度がほんのり沁み入ります。