2016-11-25

風の立つ一瞬


海を眺めながら、また聞きながら、いつのまにか愉悦にウツツを抜かしていた自分にはっと気づくことがある。あ、いま確かにウツツが抜け落ちていた、といった意識は事後的なものでしかないが、それでもウツツなき世界の、その何もない感触は起きたての夢のようにありありと身体に残っていて、胸が痛くなるほどだ。

これと同じことは風の中でも起こる。風が立つとその瞬間、ウツツは消し去られ、心の中がウツ(空)となる。ウツツに戻ってきたあともウツの感覚は残っていて、わあ、すごくからっぽの、この感じはなんだろう、とびっくりする。

風が立つたび、からっぽという感覚を、人間の身体が刻印として実感できるということ。そんな、日常のばかばかしさ、がうれしい。

さらさらときな粉の問いは飛ばされる  竹井紫乙