2016-12-06

「べし」の技法(1)


もし今これを読んでいるのが俳人なら、このタイトルから正岡子規の「鶏頭の十四五本もありぬべし」をまずもって想像するのではないかと思う。だが本日の「べし」はそれではない。

虫の音や我ら遠方より来たる  月犬(白土三平『忍者武芸帖影丸伝』)
 秋思に沈むケムンパスべし  なむ(赤塚不二夫『もーれつア太郎』)

ウラハイで見つけた五吟マンガ歌仙「虫の音の巻」から冒頭を引用。脇句「秋思に沈むケムンパスべし」の「べし」が素晴らしい。ふつう「べし」は活用語につくが、ここはケムンパスの体からいきなり「べし」が生えた方が愛らしいにきまっている。かくしてもはやこの「べし」は田島健一の「ぽ」と同じく切れ字の域に達してしまったわけだが、同じ作者に「べし」をふつうにキャラとして使用した句もあって、これも腹が立つくらいかわいい。

万緑やけむんぱすよりべしが好き  佐山哲郎