2017-03-25

『ただならぬぽ』についてのメモ(1)


時間に余裕ができたら田島健一『ただならぬぽ』を批評しようと思っていたんですが、今日カレンダーを見たら夏まで予定が埋まっていることに気づいた。そんなに先だと、時間ができてもモチベーションの方がどうなっているかわからない。しかたがないので批評は保留にし、ブログにメモ的感想を書くことにします。

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田島の句についてはすでに「ハロー・ワンダーあるいは道徳の原理」という文章を書いたことがあり、今回の句集を読んでも印象は変わらなかった。曰く「彼の作句の基本は、この世界を満たす『驚き』を捉えることにあり、またその作品には、彼の感じとっている世界と自己との関係が大抵わかりやすく畳み込まれている」。

大体にして『ただならぬぽ』の「ただならぬ」は「超凄い!」という意味だし、さらに「ぽ」も驚異を象徴するサウンドだ。

再度シンプルに言うと、『ただならぬぽ』では以下の4要素から構成されるさまざまな〈驚異〉が描かれている。すなわち、

1.「世界」の
2.「真理・知」を
3.「直接的=無媒介的」に
4.「見る・体験する」
である。(※ここで言う「直接的=無媒介的」とは「対象を言語・概念によらず直観的に把持する」という哲学用語。田島の句に「無言」すなわち反言語をモチーフとした句が一定数存在するのはこの特徴に由来する。)

また心象を描くにあたり、使用頻度が圧倒的に高いのが以下の語彙系。

1.「明るさ」「眩しさ」「清さ」「美しさ」
2.「爽快」「壮健」「明朗」「素直」
3.「純粋的」「無垢的」「未来(前進)的」
4.「偶然的」「神秘的」「静謐的」
『ただならぬぽ』の最初の連作「記録じんじつ」を全句引用する。
翡翠の記録しんじつ詩のながさ
端居してかがやく知恵の杭になる
玉葱を切るいにしえを直接見る
口笛のきれいな薔薇の国あるく
枇杷無言雨無言すべてが見える
「しんじつ」「かがやく」「知恵」「直接見る」「きれい」「無言」「すべてが見える」といった世界観はそのまま田島の素直な欲望である。また『ただならぬぽ』には4句目のような阿部完市風の句が一定数見られるが、完市の句が意味の希釈をめざすのに対し、田島のそれは「倫理」をめぐっている点に相違がある。