2017-03-09

竹井紫乙の句集



が他の川柳関係の書物とともに、大阪の居留守文庫に入ったもよう。



紫乙さんは『ひよこ』『白百合亭日乗』という句集を出していて、このブログでは『白百合亭日乗』から幾度か句を引用しているのですが、実はわたし、本としては『ひよこ』の方が好きなんですよ。とくに時実新子による選句の、的確さと寛容さとの両立が。

わたしにとっての『白百合亭日乗』は一句ごとに世界が完結した作品集。一方『ひよこ』は全て読み終わったときに作者の性情がそっと胸に残り、またそれが本としての佇まいにもなっている感じ。

うちの子になるかと言って消えた人
爪切ろう何をするかもしれないし
お別れに梨を一緒にかじります
本当にどこでもドアがあるみたい
鳥になるおでんの匂いする路地で
大声で話しかけたくなる雲だ
運命が変わるテレビを見てしまう
幸せで布をひらひらさせている
正しさに耐えて時計は生きている
どうしてもスカートはいて出たい旅
大人には大人の水がある旅路
長旅を支えてくれた絵を仕舞う
(竹井紫乙『ひよこ』より)