2017-06-17

欲望という名の電車・山宣版


山本宣治『闘争録』には「電車生物学」なる題の70ページほどの付録がついています。これにはメタファーではない実際の電車のことが書かれていまして、

今の世の中に世知辛い電車の中には、腰掛を占領して居て割に楽な思ひをして居る連中と、吊革にぶらさがつて店先に吊るされた塩鮭のやうな窮屈を味はふ事を余儀無くされて居る連中が、現在我等の眼前に居る。云ひかへれば、「現代社会」と云ふ電車の中に「腰掛階級」と「吊革階級」とが存在する事は、どんな人でも否定の出来ぬ事実である。(電車内の階級闘争)
と本題を起こし、電車内の光景をつぎつぎと面白おかしく書き出してゆくさまは、宮武外骨なんかと全く同じ系統のノリです。こういった感じ、当時のジャーナリズムの流行りだったんでしょうか?

ただ外骨と比べると、山宣はずいぶんおっとりしている。あと、外骨ほどアイロニカルじゃない。というか、正直いくぶん抜けて見えます。興味のあることだけが、頭を占めている感じで。基本、夢想家なんですね。きっと。