2017-12-30

『しししし』発売





双子のライオン堂発行の雑誌『しししし』に寄稿しています。12月31日発売です。

<目次>

○特集「宮沢賢治」
暁方ミセイ/長野まゆみ/室井光広/山下聖美/吉本隆明

宮沢賢治作品のコミカライズ
くれよんカンパニー/坂口尚

「銀河鉄道の夜」他1篇の読書会模様収録

○創作
小津夜景/オノツバサ/結崎剛/吉田知子

○読み物
東浩紀/荒木優太/岡和田晃/川崎昌平/木太聡
倉本さおり/高橋啓/戸谷洋志/仲俣暁生/橋本倫史
三輪太郎/宮崎智之/屋敷直子/柳原伸洋/山本貴光/吉川浩満

○企画
様々な書店の日常を綴った「本屋日録」
Cat’s Meow Books/H.A.Bookstore/Readin’ Writin’/青いカバ/えほんや なずな
劃桜堂/敷島書房/書肆スーベニア/パン屋の本屋/ひなた文庫/双子のライオン堂

公募エッセー「本屋の思い出」大賞作掲載

読者によるコラム「本と生活」
鮎食亭電柱/伊藤あきこ/片山昌美/鈴木涙香/高垣ぼす
中村圭佑/廣瀬さとる/藤村忠/松井祐輔

詳しくは⇩
http://shishishishi.liondo.jp/

2017-12-29

序章よりはじまる夏



胸に聴くプロペラの音夏は来ぬ  西原天気

きのうはあまりに寒いので、こんな句を思い出して、冬から目をそらしていました。

まっさらなノートの1ページ目が、似合いそうな句。

序章のような静けさの中に、秘められた高まりが感じられる。

静けさと高まりとが一句の中で釣り合った句は、〈バランス〉というものを大切な〈質感〉として捉えているこの方ならではのパターンの一つ。

発情のかそけし虹の立つごとし  西原天気
噴水と職業欄に書いて消す  
ハンカチを干していろんなさやうなら

2017-12-28

水原紫苑のサンクチュアリ




ロシアのさんま缶、開けてみましたら、闇鍋的なところはまるでなく、いたってふつうの味でした。2尾入り。かの地に旅行することがあれば、また食べよう。現地では、1缶45ロシアルーブル(91円)らしいので。

以下、クリスマスに考えていたこと。

処女性というのは短い詩型で扱うのがなかなか難しいモチーフ。これに対し童貞性は、現代においてもサンクチュアリとして充分機能するように感じます。それでいま、老童貞の連作がつくれないかしら、となんとなく思っているところ(明日にはすっかり忘れているかもしれない)。水原紫苑のこの歌とか、凄いですよね。

大いなる襟被(き)て死後も歩みくるザビエル汝(なんぢ)童貞なりや  水原紫苑

2017-12-25

さんまの缶詰





毎年クリスマスイヴはそれらしいごはんを食べる。でも今年は同居人が、ふつうのごはんにしようと言うので、ムール貝の白ワイン煮とラングドック地方の果実酒ですませた。

その代わり、昼間の買い出しの途中ロシア食材店に寄り、いつもなら買わないようなものを闇鍋気分で遊び買いする(祝祭なので浮かれている)。さんま(Сайра)の缶詰もその一つ。さんまを食べるの、十数年ぶりくらいなので、アタリだったらうれしい。

2017-12-23

悲しいので、お菓子を食べる。




明日はクリスマスイヴなのに、お菓子を食べている。明日もクリスマスケーキを食べないといけないのに。ああ。

そうそう、先日、ヒラメの夫婦の漢詩を探していた話。あのあと、詳しい方が比目の詩を紹介してくださり、わーいと思って読んでみると、とても悲しい詩だったのでショックを受けた。わたしの頭の中では、夫婦がエメラルドの海をすいすい泳いでいたのに、紹介された詩は死んだ奥さんを思い出しているものなのだった。

2017-12-11

みみずをめぐる随想。


こちらのサイトで、季語「蚯蚓鳴く」についての所説がまとめられている。要点がいっぱいで、読み応えがありました。一節のみ引用。

『本草綱目』の影響力を併せ考えてみると,近世日本における「ミミズが鳴く。」という見解は,10世紀以前に渡来した『古今注』の見解が根付いたものとみるより,16~17世紀ころ,『本草綱目』等を典拠とし,「陰晴」に関する見解とセットになって,改めて渡来したものと考える方が妥当ではなかろうか。(ミミズの俗信「歌女」(2))

江戸時代は、訳注のベストセラーがいくつも生まれたくらい町人階級も漢詩を読んでいたので、みみずについても、陸游の茶詩や陳師道の絶句などを知っていたと思う。二人とも有名だし、宋代の文人趣味はそのまま江戸時代の俳人たちに丸ごと吸収されたし。とくに陸游の茶詩は、みみずの鳴き声がどんな感じかわかるので嬉しい。

茶鼎声號蚓,香盤火度蛍。(陸游)

茶鼎の声は、號ぶ蚓。香盤の火は、度る蛍。
(茶釜の沸く音は、叫ぶミミズのよう。
香盤を灯す火は、巡るホタルのよう)

木揺電繞雷取龍,伏蛙號蚓溝瀆空。(陳師道)

木は揺れ、電(いなずま)は繞(めぐ)り、雷は龍を取る。
蛙は伏し、蚓は號(さけ)び、溝は空を瀆す。