2018-04-01

漢詩っぽい漢詩の書き方。


大田南畝『寝惚先生文集』に、こんな漢詩があります。

貧鈍行  大田南畝

爲貧爲鈍奈世何     貧すれば鈍する世をいかんせん
食也不食吾口過     食ふや食はず、吾が口過ぎ
君不聞地獄沙汰金次第  君聞かずや地獄の沙汰も金次第
于挊追附貧乏多     かせぐに追ひつく貧乏多し

韻は「何・過・多」(下平声五歌)。こういう遊び、大好きです。

一首のレシピは単純。まず「貧すれば鈍する」「食うや食はず」「口過ぎ」「地獄の沙汰も金次第」「稼ぐに追いつく貧乏なし」といった金銭と生計にまつわる5つの言い回しを選りすぐり、それらをいかにも漢詩っぽい、もったいぶった鉄板フレーズと組みあわせるだけ。

ここで使用された、漢詩っぽくみえる鉄板フレーズは次の3つ。

・「〜をいかんせん」……これは四面楚歌となった項羽の「虞や虞や汝を如何せん」に決まってます。
・『貧鈍行』&「君聞かずや」……タイトル&サビが同型(加えてサビの大胆な字余りや、百鬼の景色を詠った点も一緒)ということで、杜甫『兵車行』が典拠です。

こんなふうにすると、蘊蓄てんこ盛り&立派な典拠を2つも有するご立派な漢詩ができるわけです。すごいね。

いま日記を書きながら思い出したのですが、SFばかり読んでいた中学生のころ『SF川柳傑作選』という本を買ったんです。内容はうっすらとしか覚えていないんですけど、たしか小松左京が大田南畝的な遊戯をものすごく得意としていたんですよ。やっぱり教養人なんだなあって子供心に感激しました。

で、当時わたしがのめり込んでいた筒井康隆はどうかというと、これがもうからっきしダメで〈宇宙船掻いたセンズリ五万回〉なんてどうしようもない句を詠んでました(表記はうろおぼえ)。宇宙船の中ってヒマすぎて他にすることがないんですって。

あとかんべむさしの〈赤茶けた星にひとり〉も覚えてる。いや〈赤茶けた星にわれひとり〉だったかな? こちらは自由律の佳作だと当時思ったものです。