2018-05-19

恋愛目線で読む「たてがみ」



「オルガン」を読んでいたら、浅沼璞氏の文章に高柳重信のこんな俳句を見つけました。

たてがみを刈り
たてがみを刈る

愛撫の晩年   高柳重信

詩として最高。ぐっとくる。ただし、女性の書き手がシャーマニックな情緒に安易に流れるときに似た、いくぶん「とほほ」な印象は拭えません。「たてがみ」という語の使い方に、あまり知的とはいえない男の恍惚(青二才のマッチョ的ロマン)が露わで、一歩引いたダンディズムがないんですよね。その点、

たてがみを失ってからまた逢おう   小池正博

こちらも男のロマンにあふれているけれど、でも「たてがみ」がしっかりと客観視されている分、ああ、大人の色気があるな、と思います。あとこの川柳、ヘミングウェイの1行小説(six-word novel)のような風格もありますよね。この手の大らかな散文性は川柳の得意とするところ。

男性の「たてがみ」は金や権力とさほど変わらないモチーフなので、よほど上手に詠まないと阿呆らしいことこの上ない。そしてまたそっと言い足すならば、女性というのは案外「たてがみ」のない男性を愛おしいと思うものなのでした。

たてがみを手紙のやうに届けたい裸足で眠る樹下のあなたへ
小津夜景