2018-10-03

日替わりの夢にはいまだ慣れない



低空(ひくぞら)に夏高空(たかぞら)に秋がゐてすれちがふのか綱引きするのか

While summer is in the lower sky,
autumn in the higher sky.
Are they passing each other
or having a tug-of-war ?
  snowdrop


すっかり大人になるまで、人間は誰しも大空から墜落する夢によって、毎朝現実の世界に戻ってくるのだと信じていた。

それまでどんな夢を見ていようとも、朝になると必ずカチッと場面が変わり、恐ろしいスピードで回転しながら落ちて地面に叩きつけられる。その、叩きつけられるすんでのところではっと目がさめるというのが、身体に組み込まれた起床のメカニズムだと思っていたのだ。

完全にそう思い込んでいたので、わたしはこの現象について深く考えたこともなかった。それがある時、たまたま結婚の準備のために実家に戻っていて、なんとはなしに母の前で、

「あのさ、どうして人間って、毎朝墜落の夢で目がさめるんだろうね」

とつぶやいたところ、母がすごい顔をして

「えっ!」

と声を上げた。

結論だけを書けば、わたしは生後半年の時に、マンションの外階段から地上に転落する事故にあったらしい。で、その時に見た衝撃的映像が30年もの間、毎朝フラッシュバックしていたのだった。

すごいことである。

さらに不思議なのは、この事実を知ってからというもの、急速に墜落の夢を見なくなったこと。今では毎朝違う夢で目をさますが、日替わりの夢にはいまだ慣れない。