2019-10-24

楽器を鳴らす手つき(澤の俳句 5)


《 お ね が い 》

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奏者の手は水掬ふ形や春  冬魚

紀貫之〈袖ひちて結びし水のこほれるを春立つ今日の風や解くらむ〉を借景に、水を掬う仕草と楽器演奏とを重ねた晴れやかな句。一句の締めを「や春」と打ち鳴らしたことで見事な音曲感も生まれています。もしも言葉のアンサンブルを組むとしたら、湯を掬う仕草と楽器演奏とを掛け合わせた須川よう子『酢薑』の歌〈湯を掬ふ柄杓の手もて弦掬ふヴィオラ・ダ・ガンバ長閑なる午后〉を隣に並べたいですね。

赤絵の珈琲碗鍋島家雛道具  冬魚

佐賀の深川製磁製作道具也。梅コーヒーカップ&ソーサーのなんてかっこいい詠み口でしょう! 全て漢字にしたくなるところをちょっとこらえ、詠い出しに平仮名の「の」を差し込んだ小技が効いています。