2024-03-21

七曜の断片





月曜日は山本貴光さんの新刊『文学のエコロジー』を読む。作品をするすると解析していく手つきが爽やか。「鮮やか」ではなく「爽やか」と書いたのは、文学批評にまつわる特殊な概念や装置がとても控えめにしか用いられていないせいか、語と語のどの接合部分にも胡乱な(投機的ないし山師的な)摩擦熱が発生していなかったから。単語間の配列が端正で読みながら清々しい気分になる。でもって火曜日はリチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』を読んだのだけれど、こちらは胡乱上等、怪しさ満点、暴飲暴食もかくやとばかりの荒ぶった言語運動。水曜日は春物の上着と靴を探しに街へ。上着はゴアテックス素材のトレンチコート。靴はカルフのMESTARI CONTROL。配色はSILVER LINING/TRUE NAVYにした。ついでにツヴィリングの包丁も購入した。高くてびっくりしたけれど思い切って買った。包丁を買ったのは生まれて初めて。大学入学の折と結婚の折に母が揃えてくれたヘンケルスと有次の包丁をいままで使い続けていたのだ。

先日は冬泉さんのお誕生日だったらしく、「いつもの連衆で表合でも巻いて贈りませんか」と声をかけてもらう。わたしは花の座の担当。

まれびとは全部伴天連花の茶屋

「全部」って表現どうなのよ、とちょっと思うけれど、わたしは音からつくるのでしばしばこういうことが起こる。中七は賑やかな和音風にしたかったらしい。

『すばる』4月号はティータイム特集。わたしもそれに便乗してキャロブ(いなごまめ)からコーヒーをつくる話を書いた。キャロブのコーヒーって自分には全く馴染みがないのだけど、年末にギリシャを旅した折、かの地の食材を眺めていたら「Carofee」という商品名で普通に販売されていた。ギリシャ人にとってのキャロブはフランス人にとってのシコレみたいなものなのかしら。以下の写真はル・コルビュジエの休暇小屋に立っているキャロブの木と拾った莢。