2022-12-19

音楽を売るかのように





週末は曇り日。でもクリスマスだからか人出がすごかった。風船売の男性が、音楽を売るかのように風船を売っていました。

日本連句協会四十周年記念『現代連句集Ⅳ』に寄稿しました。他には堀田季何さんのエッセイや座談会、全国の連句会の作品などが読めます。興味のある方はこちらにお問い合わせくださいませ。

『NHK俳句』1月号に、香りをテーマとした15句を紹介する小文を寄稿しています。

2022-12-16

『花と夜盗』刊行記念・選書フェアのご案内2





神戸にある自由港書店で『花と夜盗』刊行記念フェアがはじまりました。私の好きな文庫本10冊が陳列されていまして、来店するとフリーペーパー【小津夜景の選ぶ文庫本10冊】が入手できます。また『花と夜盗』ご購入の方には初回特典として特製カードがつくそうです(先着順)。場所はJR須磨海浜公園駅南方面口正面、ビーチに向かう青い一本道の途中、ブルーグリーンのタイル貼りレトロビル1F。絵と絵本、詩と小説、自由と暮らしのための本、そして自分で書きたいひとのための、紙と書くものを置いている本屋さんです。

(追記/上の写真、正面からみるとこんな感じの教会です。よくもまあ、こんな雑多なパーツをひとつにまとめたなと思います。)

2022-12-12

『花と夜盗』刊行記念・選書フェアのご案内





現在、小樽の書店「がたんごとん」にて「小津夜景が選ぶ文庫本&小津夜景の本フェア」が展開されています。こちらのページに陳列されている本を購入すると【小津夜景の好きな文庫本10冊】と題された、各文庫を200字ずつ褒めちぎったフリーペーパーがおまけでついてくるはずです。また文庫以外に詩歌のおすすめとして荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』と長嶋有『春のお辞儀』も選びました。こちらの2冊については上記ページ内でコメント全文をお読みいただけます。

フリーぺーパー【小津夜景の好きな文庫本10冊】についてですが、実は私、選書フェアを企画していただくのって今回が初なんですよ。それを版元のTさんに申し上げましたら、穏やかな微笑を浮かべながらTさん、

「あ。そうなんですか。それでしたら今回はテーマを決めず、シンプルに小津さんの好きな本を10冊選んでくれたらいいです」

とおっしゃる。大いに弱りました。自由すぎてどうしたらいいものか。思案の末、こんなふうに考えました。まず『花と夜盗』を購入してくださる方々の懐に更なるご負担をかけないようにしたい。そうすると対象はおのずと文庫本になります。あと岩波の本の仕入れは買い切りですから、フェア終了後、売れ残った本を返品できません。つまり書店さんにご負担を強いる。そんなわけで、岩波以外の文庫本を様々なレーベルから一冊ずつ選んだ次第です。

1. 石田幹之助『長安の春』(東洋文庫)
2. 菊地成孔『スペインの宇宙食』(小学館文庫)
3. 野尻抱影『新星座巡礼』(中公文庫BIBLIO)
4. 森茉莉『父の帽子』(講談社文芸文庫)
5. エリック・サティ『卵のように軽やかに―サティによるサティ』(ちくま学芸文庫)
6. テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)
7. 鴨居羊子『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい』(ちくま文庫)
8. 太宰治『斜陽』(新潮文庫)
9. リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』(河出文庫)
10. 夏目漱石『草枕・二百十日』(角川文庫)

2022-12-10

ハードボイルドに、彼女は海を語った





先日ご紹介した佐藤りえさんの個人誌『九重』ですが、しばらく拙宅には届かないだろうと思っていたらもう到着しました。おまけがいっぱいで、突然サンタクロースがやってきたみたいです。


こちらが『九重』と1個目のおまけ「怪談牡丹灯籠双六」。


そしてこれが2個目のおまけ。佐藤りえさんの豆本句集を収納する箱です。


さっそく収納してみました。


空想科学俳句集『ぺこぽこ宇宙』、探偵俳句集『いるか探偵QPQP』、幻想怪奇俳句集『良い闇や』。この3冊をお持ちの方、こちらのフォームから箱を注文(無料)できるそうです。

海沿いのポストは海を向いていない眩しかりけり晩夏の潮
佐藤りえ

『九重』誌上歌集『森の中』より。この歌の「海を向いていない」という情景把握、すごくないですか。

いえ、確かに言われてみればそうなんです。あたりまえのことを言っている。そうなんですけど、でも詩歌的抒情って、ふつうはやたらと海を向きたがるものなんですよ。

もうね、いつだってなんだって、安直に海を向いてるって決まってるんです笑。

だからこそ「海を向いていない」というリアルな描写が胸に刺さります。またこの衝撃を回収する下の句の光景が巧み。一首を立体化する情感の谷折り(海を向いていないポスト)と山折り(眩しい晩夏の潮)との襞が深く、結語の「潮」も圧巻で痺れました。

2022-12-08

『花と夜盗』をめぐる12章





生存確認系個人誌『九重』3号が発売されています。今回は佐藤りえさんの誌上歌集『森の中』と、小津による『花と夜盗』制作ドキュメントの2本立てです。

私は〈『花と夜盗』をめぐる12章〉と題しまして、句集が出るまでの作業の行程について書きました。本を編むとなると、句を書く以外のあれこれをこなさないとなりません。これが想像していたよりも量が多く大変だったので、今回やったこと並びにその方法を、忘れてしまわないように整理した次第です。

構成は〈1.はじめに/2.ページ数/3.句数/4.本文デザイン/5.句をまとめる・ならべる/6.目次の構成/7.連作のタイトル/8.推敲/9.句集のタイトル/10.カバー/11.帯文/12.句集をつくることは〉の12章。

それはそうと句集をつくることの最大のメリットは何か。それは断捨離の効果があることです。散らかり放題だった抽斗の中がすっからかんになると、気分も明るくさっぱりします。

でね、すっからかんになると、一から出直せます。

すっからかんにならないと、人ってなかなか一から出直せません。

『花と夜盗』が完成したとき、洗いあがったような心でわたしは思いました。よし、次回作こそはがんばるぞって。そういうことですよ。

2022-12-06

クリスマスの飾り付けはおあずけ





かくも文明が発達した今日に至ってもいまだ解決されざる災難に「タンスの角問題」がありますが、昨夜さあ寝ようとベッドに向かったそのとき、ひさしぶりに左足の小指をやってしまいました。痛みをこらえつつ、朝になったら治っていますようにと祈って寝、目覚め、その瞬間もう痛いんですよこれが。見るとばっちり腫れている。足をついても大丈夫だから骨は無問題、シンプルに突き指です。突き指なんてしたの何年ぶりだろう?

今日の午前中は新しい出版社の方と打ち合わせ。私、新しいことに取り組みたいですと申し上げたら、本当にやったことのないことをやることになりました。あとは書くだけ。書くだけです。

この夏まで「小説すばる」で「空耳放浪記」という古今東西の詩歌・言葉についてのコラムを連載していましたが、このたび「すばる」にお引っ越し&リニューアルして再開することになりました。第一回は「狂歌の面白さ」。江戸時代の狂歌からナイス害氏の現代短歌まで、つれづれなるままによしなしごとを綴っています。イラストは引き続き柊有花さんです。この夏、編集者とお会いした折に「すばる」を見せてもらったら、イラストの分量が「小説すばる」よりも少なめの文芸誌だったんです。それで少し心配だったのですが、結局、絵巻物みたいな、屏風みたいな挿絵が入る最高のレイアウトに仕上がりました。

2022-12-05

小さな港の夜の風景





クリスマスなのでツリーを出しました。今年は体調がいいので、少々飾りつけもしたいところです。

「俳号をつけたいのですが良い名前が思いうかびません。小津さんはどのように俳号を決めましたか?」という質問はこれまで何度もされたことがあり、人前でも3回以上喋ったと思うのですが、さいきんまた同じことを訊かれたのでここに書いてみます。

実は「小津夜景」は俳号でなく、もともとはハンドルネームでした。ネットでの応募の際に名前が必要となり、わたしは小津安二郎が好きなので、苗字は小津で決まり。で、小津って小さな港って意味だよねと思いつつ、なんとなく検索画面に「petit port」と打ち込んだら、ロマンティックな夜景の画像がいくつもひっかかって「夜景かあ。そういえば港といったら夜景だったわ。小さな港の夜の風景。これでいいんじゃないの」となった。ここまで正味一分です。

こういうのって悩んだらおしまいですよね。アイデア詰まりになって。わたしも、もしもハンドルネームじゃなかったら簡単には決まらなかったかもしれません。あと「そもそも俳号は必要なのか」といった話もありますが、これについては明快かつ独特な個人的見解をもっているので、いつか気が向いたら書きます。

2022-12-01

師走の青と花と夜盗





句集『花と夜盗』の刊行から一週間。みなさまお忙しい中ご感想をお送りくださいましてありがとうございます。「黒い本」であるというのが一部の方々におかれましては大変な驚きのようで、

「表紙だけじゃなく作品の色も濃い。ってかふわふわしてない!」

との声がちらほら。わたしとしても、ふわふわは大好きなので、どの連作を収録しようか最後まで大いに悩みました。が、ものづくりで避けるべきは折衷案であるとの結論から「今回はこの路線をとことん演じ切ろう!」との覚悟で思いきり振り切った次第。おーそっち行ったか!と笑ってください。

知らないうちに「季刊アンソロジスト」が発売になっていました。師走だけど暇で暇でしょうがないよという素敵な方、もしもいらっしゃいましたらご覧いただけますと幸いです。