2022-04-30

映画『酔拳』における黄正利と題字と音楽





さきほど須藤岳史さんとの共著『なしのたわむれ』刊行記念対談が公開されまして、その動画の47分あたりから広東語版の映画『酔拳』冒頭における黄正利の足技と題字と音楽とのマリアージュについて語ったのですが、実際の映像がこちらになります(吹き替え処理以外は広東語版そのままです)。開始2分から3分20秒あたりがわたしの推しシーン。幸運なことにファイトシーンなので台詞はなし。皆様お願いです。騙されたと思ってどうか見てください。なにかとお忙しいところ誠に恐縮ですが、ぐぐっと音量を上げて、できましたら最初から…。

黄正利はですね、去年帰国した折に毎日散歩していたのが巣鴨駅周辺で、ちょうどプロレズグッズ販売の聖地・闘道館があったんですよ。と、こう書くとプロレスにちょっと詳しそうですが全然そうではなく、周囲にプロレス愛好家が多いせいでそこがどんな場所かをたまたま知っていた。で、「ここが闘道館か」と思いながら店の外壁を眺めていたら「ザ・グレート・サスケの大予言」とか「300分5本勝負、全日本プロレス48年を語りつくす。ターザン山本×和田京平」とか「ブル中野、女帝反省会」とかいった催し案内のポスターがびっしりと並ぶ中、ふいに「龍熱トークライブ2020黄正利スペシャルイベント最恐無敵!シルバーフォックスナイト」と書かれた一枚が目に止まったんです。心臓破れるかと思いましたよ。トークイベントは日本初だと書かれていたのには驚きましたが、S席8000円という値段も衝撃でした。往年のファンたちはこの倍の値段でも馳せ参じるに違いないでしょうけど。わたしだって日本にいたなら観に行ったもの。上の画像がそのポスター。記念に写真だけ撮りました。

2022-04-29

海はいちまいの布に似ていた




本日22時より、須藤岳史さんとの共著『なしのたわむれ』刊行記念対談がスケザネ図書館にてプレミア公開されます。自著を語るのではなく、執筆にまつわる周辺の話および視聴者からの質問に答えるといった内容になっています。

海は夕暮れ。静かな一刻。釣りをする人。そしてカモメ。

2022-04-28

ねてもさめても冬の旅



先週、とてもかわいい部屋着(上の写真がそれ)を買ったんです。嬉しくて、今もそれを着て日記を書いているのですが、いかんせん夏用のワンピースなので寒くて凍えそうなんですよ。そんなわけで最近は、家の中でダウンジャケットを羽織って暮らしています。不便です。

4月28日創刊の文芸誌「季刊アンソロジスト」に、存在のためのふわふわした組曲1「ねてもさめても」を寄稿しました。連載です。俳句の連載ってめずらしいですよね。で、これを機にふわふわについて考えようかと。下のツイートによると、創刊記念のスペースがあるもよう。


それから堀田季何さんの受賞記念の連句を行いました。

くちづけはやがて涼しき未来都市
解きえぬパラドクシア・エピデミカ
とこしへに学魔の胸に棲む花を

この流れ、季何さんに似合うと思いませんか。自分ではとても気に入ってます。句集『人類の午後』についてはハイクノミカタで激アツの一句評も書いております。

2022-04-26

凧は空を泳ぐ




天気がいいので散歩に出る。


このごろ散歩の人が増えた。天候によっては泳いでいる人も。


16時、ふたたび海に出る。16時といっても、いまニースで太陽が真上に来るのは13時半だから実質14時半の日差し。日焼け止めを塗ったらよかったなあと後悔しながら砂浜を見まわすと、女性が一人、凧揚げを愉しんでいる。写真左端の女性が中央の凧を揚げているのだ。夕方は人も少なく、凧が風に泳ぐようすが哲学的だった(写真、拡大できます)。

2022-04-20

空気が変わる





先日、道に出ていた土産物屋でマグカップを買ったら、この布袋に入れてくれた。キャビネットの扉に引っ掛けたら、室内の空気が初夏に向けて一気に開かれた。

2022-04-18

春日漫筆





須藤岳史さんのお知り合いから写真をいただく。京都の恵文社一乗寺店、入り口のすぐ隣のテーブルに『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』が平積みされていたそうだ。とてもうれしい配置。

アスタルテ書房、三月書房、恵文社一乗寺店は学生時代よく通った。アスタルテ書房は客としてではなく店番として、である。店主の佐々木さんから教えてもらったことは、今こうしてものを書く上でとても助けになっている。もう会えないなんて不思議だなあ。三月書房も当時のご主人はこの世にいない。ふしぎだよねえ。恵文社には頑張ってほしい。

今月号の「小説すばる」発売されているもよう。わたしは先月号もまだ手にしていないのに。いつ届くのだろう。北方謙三の小説、たのしみにしてるんですけど。ついでに『なしのたわむれ』も早く見たい。今日は玄関の壁にカバーを拡大印刷したものを飾った。このデザイン、春に飾らないでいつ飾るんだ、と思って。へへ。ばかですいません。

2022-04-10

物作りの馬力



現在発売中の「文藝春秋」5月号の巻頭随筆欄に連作「よるはみなもの」を寄稿しています。雑誌を手にとる機会がありましたらご覧いただけますと幸いです。




きのうのMUCEM企画展のつづき。上の画像は国民戦線(フランスの政党「国民連合」の旧党名)による1992年のポスター。彼らが敵とみなす「社会主義、移民、麻薬、拝金主義」の頭文字を縦読みするとフランス語のエイズ(SIDA)という単語になる仕掛け。これ、うまく写真が撮れなかったので、こちらの写真を借りました。

エイズ撲滅のためのデモを題材にしたシェリ・サンバ「エイズキャンペーンを支持する行進」1988年。ルイ・ヴィトンのトラベルブックシリーズでも知られるシェリ・サンバのファンは多いと思います。わたしもユーモアを湛えた看板風の絵面で社会を寓意的に描く、彼のカーニヴァル的雑駁さが好きです。なにより素敵なのは画の力強さ。いささかもメッセージに負けていません。この作品は134,5x200cmの油彩なのですが、印象としては壁一面の大作に感じられました。国民戦線のポスターを見て怖気をふるったあとだったのでなおのこと、彼の物作りの馬力に励まされました。

2022-04-09

マルセイユを歩く



金曜日は早朝からバスに乗り、片道3時間かけてマルセイユに出かけ、欧州地中海文明博物館(MUCEM)でエイズの社会史の企画展« VIH/sida, l’épidémie n’est pas finie ! »を観ました。写真はTom Fechtの「ノマドの記憶」。いまだ終わらぬエイズをめぐる闘いを社会が忘れないように、亡くなった患者の名前を彫った敷石を並べた作品。


興味深い展示物が満載の企画展でしたが、ニューヨークの共同墓地ハートアイランドを撮影したヴィジュアル作品"Loneliness in a Beautiful Place"を床に仰向けに寝て観たのが殊によかったです。

2022-04-02

雨降りだから下町でも歩こう



今日はひどい曇り空。ときおり雨も降っている。でもなんかそんな気分だったので外に出ると、まあそこそこ歩けそうな感じ。そのまま新刊『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』の第5信「ことばはこばと」に描いたルートを散歩することにしました。


ここはサレヤ広場。老舗レストランの屋台でソッカを食べます。


ソッカを焼くのはこの薪ストーブ。


サレヤ広場への通路。これを向こう側に抜けると海です。


抜けたところ。海ぞいの道を進む。傘をもたずに家を出たのでけっこう濡れました。


海沿いに建つ家。その背後の山のようなものが、


戦没者慰霊碑です。この慰霊碑の話も『なしのたわむれ』に書きました。


戦没者慰霊碑を通りすぎ、


植え込みの彫刻などを眺めつつ、


港のベンチでちょっと休憩。そこからトラムに乗ってまっすぐ帰宅。いやちがう、家の近くの古道具屋に寄ってから帰ったのでした。

2022-04-01

レーモン・クノー『文体練習』



レーモン・クノーが好きなのですが、翻訳を読んだのは『地下鉄のザジ』のみで、もう何十年ものあいだ、日本語との対応がふわふわと、あいまいなままだったんです。で、今日ひさしぶりに『文体練習』をぱらぱらとめくりつつ、ふと思い立って日本のAmazonを覗いたら、なんとkindle版が存在するではないですか。ええ。ぽちりましたとも。で、いま読んでるとこ。なるほど、ちゃんと日本語に訳すとこうなるのか、とうなりながら。朝比奈弘治さん、すてきだなあ。