2023-11-23

毎日新聞インタビュー掲載のお知らせ





先週の土曜日に出演したFMヨコハマのFUTURESCAPEは、明日金曜日までradikoで聴取可能みたいです。それから毎日新聞の11月20日夕刊にインタビューが掲載されました。ネット版はこちらでお読みになれます。『いつかたこぶねになる日』について書いていただきました。

とうとう今日、入稿データが印刷所に渡りました。このあとまだ少し推敲をして、問題なく進めば年末に配本とのことです。

2023-11-15

ラジオ出演のお知らせ





今週の土曜(11月18日)、FMヨコハマのFUTURESCAPEにゲストとして出演します。出演時間は10時から30分ほど。『いつかたこぶねになる日』の話をする予定です。

『すばる』12月号の空耳放浪記は「ベースボールがもたらしたもの」と題して正岡子規について書いています。スポーツの秋、ということで。

* * *

前回の日記に「家が一番である」と書いたばかりなのに、先週木曜日から三日間パリに滞在していた。友だちの個展を見にいく用事があったのだ。せっかくなので絵を一枚購入する。それ以外の時間はカフェで本の原稿を書く。発売日はどんどん先にずれ、これ以上の先は存在しないぎりぎりに達した。

2023-11-06

マラソン大会の日曜日





日曜はニース・カンヌ国際マラソン。わたしはカンヌの砂浜に立つ高床式カフェで原稿書き。夜はカンヌのホテルに泊まる。晩御飯のあとはホテルのカフェテリアでまた原稿を書く。

ホテルは5月の時点で予約していたが、どんなところだろうとわくわくしていた自分は愚かであった。疲れるばかりでなにもいいことがない。自宅が一番である。

2023-11-05

奇跡のように軽やかで





ブログを更新しないのはさぼっているのでは全くなく、12月刊行の本の直しが佳境で深刻なまでに時間の余裕がないからだ。ゲラは直され直されて、すっかりもとと別の作品になっている。もともと直しが多いタイプであるのに加えて、最初に内容の見通しを立てられない本(書きたくないことを書くのでどこまで掘り下げられるか不明)だったので、どうしても最後にしわ寄せがくる。さっき友だちが「本、進んでますか?」と連絡をくれたので泣き言をいった。そしたら「だいじょうぶ、だいじょうぶ。真っ赤なゲラなんて普通だよ」と励ましてくれる。

今週は著者インタビューを2社のメディアから受けた。素粒社の『いつかたこぶねになる日』が新潮文庫になったから。そう、なったのだ。ブログで告知したかったのに、はっと気づいたときには刊行されてしまっていた。帯文は江國香織さん。解説は永井玲衣さん。そして装画はguse arseさんで、地中海の波、貝殻、陶器、古代の宮殿など、さまざまなイメージが目に浮かぶデザイン。こんなのありえる?ってくらい奇跡のように軽やかで、じーんと感動してる。

2023-10-19

秋山武太郎と幾何学の歌





日曜日は、Tシャツに短パンで海ぞいの道を散歩すると、まだ歩いているひとの半分は似たような格好で、泳いでいるひともいるくらいだったけど、そこから天気がぐずつき出して、とうとう今日は雨。この雨がやんだらほんものの秋が来るのではないかと恐れている。

12月刊行の新刊。もうゲラができているというのに原稿を三本差し替えることに決め、いますごい勢いで書いている。わたしは毎回これをやってしまう。この追い込まれないと現実がみえない体質、どうにかならないだろうか。

『すばる』連載中の空耳放浪記。今月の題は「穴のないドーナツと幾何学的神話」です。お読みいただけると嬉しいです。文中に引用した秋山武太郎の長歌をここにも抄出します。すごく好き。最後まで読みたくなった方はネットで調べれば出てきます。

幾何学を讃嘆する「うた」 秋山武太郎

万象の微を極むれば
点とこそなれ此の点ぞ
我が幾何学の始源なる
それ一点の行くところ
一たび動けば線となり
二たび動けば面となり
三たび動けば体となる

見よ幾何学の微妙空
平行線か天の川
同心円の月の輪に
流るる星の軌跡しも
推理し来れば幾十線
幾個の角の去来みな
自然の法を自現して

2023-10-02

LE MONDE D'HERMÈS N°83 AUTOMNE-HIVER 2023





LE MONDE D'HERMÈS N°83 AUTOMNE-HIVER 2023 (エルメスの世界 N°83 2023秋冬号)で俳句連作を発表しています。先月より世界中のエルメスの店舗で無料配布中。興味のある方は、どうぞお店の方に声をかけてみてください。カタログは拡張現実になっていて、スマートフォンに無料アプリを入れてところどころのページに翳すと立体アニメーションが楽しめます。

わたしの役割は秋冬コレクションを纏ったHarriet Parryの作品にフランス語の俳句を添えること。また俳句は佐々木未来による豪華な書にもなっています。

カタログは10ヶ国語で展開されているのですが、日本語への翻訳は自分でしました。その訳を添えて、気ままにいくつか。

un roseau d’or
pense en rêvant
d’un oiseau oxymore.

金の葦
オクシモロンの
鳥を夢む



klaxooooon!
la lune a plongé
dans un miroir profond.

クラクション
月の飛び込む
深き鏡(きょう)

二句目の上五、最初はun coup de klaxon.と詠んだのですが、なんとklaxonという単語が商標侵害にあたるので使用できないと言われ、抜け穴はないかと考えた結果こうなった次第。制約とは発想の源泉だなあとあらためて実感しました。

2023-09-20

毎朝うろこ雲を見上げている





とうとう夏が終わってしまい、悲しくてしかたがない。時間が巻き戻せないかなって思ってしまう。

「時間を巻き戻す」というのもそうだけど、さいきん、生きてきて、自分の内側から初めて湧き上がってきた言葉というのがいくつかある。たとえば「神」という言葉。ちょっとまえ、ふと「どうして神様は人間を草食動物としてつくらなかったんだろう…!」と思い、思うやいなや自分の発想にたじろいだ。いったいどうしたのだろう。

先週から夫が出張で全州に出かけていて、写真がばんばん送られてくる。上もその一枚。街の風景は京都を連想させる。またハングルがおしゃれ。モダンデザイン的で。モダンすぎて宇宙語っぽく見えることすらある。

宇宙といえば、現在発売中の『すばる』に「ジャズ・フェスティバルと星」と題したエッセイが載っています。トリッピーかつスプーキーな演出を愛するハービー・ハンコックが舞台上の音という音をキッチュな天文現象に変えてしまったこの夏のジャズ・フェスティバルの話から、国立天文台ハワイ観測所の台長だった海部宣男の著書『天文歳時記』へと移行して、とても素敵なハワイの叙事詩に触れました。

2023-09-10

あんペーストのおいしい召し上がり方





土曜日、日本から来た知人と遊ぶ。

朝10時にマセナ広場で待ち合わせ、広場を抜けて海へ出る。海を眺めた後は城跡のある丘に登る。高い丘から見下ろすと、日曜日に開催されるアイアンマン世界選手権の練習をしている選手たちが、サメから逃げているのかと思うくらいのスピードで泳ぎの仕上げをしていた。

昼食後は旧市街で三つの教会と、現在楽器博物館になっているラスカリ宮を巡る。ラスカリ宮で見知らぬ男性に声をかけられる。相手は作曲家で、日本で仕事したときの写真を見せてくれる。そのあとニース近現代美術館で常設展とThu-Van TranのNOUS VIVONS DANS L’ÉCLAT(我々は閃光の中に生きている)を鑑賞。丁寧な思索が感じられる仕事だった。

日曜日の朝はコーヒーと、知人からの手土産であるとらやのあんペーストをパンに塗って食べる。箱の中に入っていた「あんペーストのおいしい召し上がり方」という紙が、ちょうど小さな名刺くらいの大きさで、写真のレイアウトが可愛らいので、しおりにすることにする。夫は隣町の方角へジョギングしに行った。わたしは今から某俳誌の原稿を書く。

季刊アンソロジスト第6号発売されています。連載中の「存在のためのふわふわした組曲」、今回の掌編タイトルは「夜を知る」です。