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2019-04-14

染屋と織屋の一本勝負



さいきん、染屋と織屋のベストマッチを発見しました。

 紺掻
春陽の日陰や藍の深緑
 織殿
夕立や織り込む箔の稲光

出典は「職人尽発句合」。声に出して読むと、両句の力量のバランスや情景のコントラストがすごくいい。形も阿吽の屏風ばりにキマっていますし、切れ字の位置も対位法っぽい。お次は私の編んだ組み歌。

 紺屋
紫の灰合ひがたき思ひをば染めてあやなく色に出にけり
「難波職人歌合」より
 織屋
はかなくも足動かして水鳥の模様織り出す浪の綾糸
「略画職人尽」より

うーんこれが対戦ならば織屋の勝ちでしょうか。紺屋の方は「合ひ=逢ひ」と「染め=初め」が掛詞です。「紫の灰合ひ」は、布を紫に染めるために灰を調合すること。なにゆえここにそんな言葉が出てくるのかというと、この歌が源氏物語の、

などてかくはひあひがたき紫をこころにふかく思ひそめけむ

の本歌取りだから。ついでに書くと、この「紫」は紫の上ではなく玉鬘です。彼女の衣の色を指しているらしいですよ。

2019-03-18

広々としたさようなら



「江戸職人歌合」の二十番、屋根葺VS左官の対戦が渋い。

○屋根葺
月影の洩るるばかりに板屋根の軒端を少し葺き残さばや
○左官
中塗りに闇を残して屋根裏の漆喰白き秋の夜の月

軒端に空(くう)をこしらえたり、壁中に闇を閉じ込めたり。職人というのは風流ですね。屋根職人をもうひとつ。

行く雁を屋根で見送る別れかな
檜皮司「職人尽発句合」

とても広々としたさようなら。檜皮司と言うからには屋根もさぞ立派なのでしょう。

職業を添えるだけで作品の見え方が変わるのが面白い。今後もこの手の歌句を拾ってみるつもり(本当に気が向いた時だけ)。