2021-03-31

古典を読むときの感覚





走り書きメモ。

日本に滞在してつらいことのひとつに「自分と日本とのあいだの時差が消える」というのがあります。ふと「いまわたしのいる場所は12時だけれど日本は何時かしら?」と思ったときに、日本も12時だというのが、ものすごくしんどいんですね。自分という時空と、日本という時空とのあいだにずれがない、ぴったり重なっているというのに適応できなくて。

ここから話を広げて、もしもですね、人類がどこかの星に移住するような時代が来るとして、どこかの星に引っ越した人と地球にいる人とのあいだには、浦島太郎的な時間のずれが生じるわけですよね。どこかの星ではゆっくり時がながれて、はっと気づいたら地球の友だちはみんな死んじゃっていて、自分だけがまだ若い、みたいな。その時間の遅さは地球に帰らない限り自覚する機会がないかというとそんなことはなくて、地球の友だちから届いたメールの文面とか、さまざまなシチュエーションから気づきうる。

でね、こういう感覚って、わたしにとってすごくなじみがあるんです。

どうしてなじみがあるなんていえるのかしら?とかんがえてみるに、あ、そっか、古典を読むときの感覚ってこういう感じなんだって思いました。わたしの場合、自分の傍に古典のある生活というのは、時間的な距離のある2点を同時平行で生きることに等しいんだって。以前「漢詩のどこが、ふしぎなのか」を書いた時も、二つの要素の同時感覚という特徴についてふれたと思うのですが、もしかするとこの話には自分にとって大事なことが隠されているのかもしれないと思って、メモすることにしました。

2021-03-29

大急ぎで海へ行く





仕事が終わったので大急ぎで海へ行く。午後5時の海はまだ明るかった。泳いでいる人もちらほら。きのう観た映画や、さいきん読んだ本の話などをしながら家人と歩き、ちょっとだけ水につかる。きもちいい。


スケザネさんがyoutubeを撮影した日の思い出をnoteに投稿しています。あの日は本当に楽しかったな。もしもコロナじゃなければトンカツを食べたあともう一軒寄りたかったくらい、ぜんぜん遊び足りなかったです。

2021-03-24

初心者が連句を巻くと何が起こるか?





家の前の街路樹がうれしいことになっている。外出のときは数メートルごとに立ち止まって眺めてしまい、なかなか歩が前に進まない。

川柳スパイラル11号は連句特集。頁をめくると、わたしが連句のルールを知らなかったころに小池正博さんと巻いた歌仙「たぶららさ」の巻が特集の巻頭を飾っていてのけぞってしまう。いや、掲載を了承したのはわたしだけれど、特集ときいたので数ある中の一巻だと思っていたのだ。しかし数あるどころか他に歌仙は載っていない。これだけである。【現代連句作品】が、まだ三回も連句を巻いたことのない素人のそれでよかったのだろうか……? 読者の方々には「初心者が連句を巻くと、いったいどういったことが起こるか?」の実演サンプルとしてご観察いただけますと幸いです。

もうひとつお知らせ。小説すばる4月号に「最高のひと皿」というリレーコラムを書いています。最高のひと皿ってあんがいむずかしいテーマですよね。わたしは昆虫目線で考えてみました。

2021-03-22

入交佐妃写真展『My favorite things』





午前。友だちから「義父が亡くなったんだけど、後始末の書類がもう大変だった…」との話を聞く。友だちの義父はイタリア生まれのチュニジア育ち、チュニジアで結婚してイタリアに戻り、つぎにフランスに移住したのだけれど、イタリアとフランスの戸籍制度が噛み合わないとか、チュニジア領事館はフランスの役所より働いてくれないとか、聞く前からそれは大変だったねと労いたくなるような話。

午後。スイスの知人からJACOT CHICOLATIERのチョコが届く。突然の贈り物をじーんとしていると、同居人が外から帰ってきて「これポストに入ってたよ」と入交佐妃写真展『My favorite things』の案内ハガキを手渡される。


新しい季節の香り。期間は3月27日(土)~4月9日(金)、場所はαブラザ大阪(ソニーストア大阪内)。展示は華道家元池坊いけばなの月刊誌『ざ・いけのぼう』で撮影してきた四季折々の暮らしの花で、入場は無料です。

2021-03-21

ナンセンスなレトロゲーム





あいも変わらず海に行く。かっこいい岩があったので近づいてみた。はやく夏にならないかなあ。

* * *

最近『フラカン』のラストオーダーの件でたくさんのメールを頂戴したのですけれど「スケザネ図書館観ました。ゲームするんですね!」とおっしゃる方が多くて「あ・そこ?」って思いました。

スケザネさんとの話を補足しますと、うちにファミコンが来たのは中一か中二のクリスマスで、それ以前からPC88・98で遊んでいました。いまぱっと思い出せるのはアイスクライマー、ロードランナー、イース、アステカ、ウィザードリィで、高校生になるとウィロー、ウルティマあたり。こうやって並べるとごくふつうのラインナップですね。ふつうじゃないPC88のゲームでいちばん好きだったのはDr.麻酔科医(内容はこちら)。もともとゲームってナンセンスの宝庫ですけれど、これはほんと不条理感すごかったです。おすすめ。

2021-03-18

『フラワーズ・カンフー』のご注文、締め切りました。





アパートの前は花ざかり。トラムの乗り場のわきにはユーフォルビア・マーチニーも咲いていて、もうすっかり春です。

『フラワーズ・カンフー』の件、書店向けのラストオーダーを締め切りました。19の書店がお引き取りくださいました。2週間後あたりから購入できるのではないかと思います。個人向けの直接購入は、あと2名いけますので、欲しい方は小津まで連絡くださいませ。

2021-03-15

スケザネさんのこととフラカンのこと。



スケザネ図書館の動画、公開中です。


スケザネさんの動画を普段からご覧の方は「なにをいまさら」と思うかもしれませんが、スケザネさんは間の取り方や話の運び方がとてつもなく自然な方で、すごく喋りやすかったです。収録前にカフェでお茶したり、収録後にトンカツを食べたりしたのも楽しかった。撮影は平井の本棚の2階をお借りしたのですが、スケザネさんは 3月 21日にもこの場所で、本職のシナリオライターとして「越境/空想世界のつくりかた」に出演なさる予定(お相手は空想地図作家の今和泉隆行さん)です。

ところで先日『フラワーズ・カンフー』はどこで買えるのか?という日記を書きましたが、あれから以下の本屋さんに手持ちの在庫を発送しました。これが本当に最後の在庫です(今後はペーパーバック版かkindle版になります)。どうぞよろしくお願いします。

がたんごとん(webshop)
Go Go Round This World! Books&Cafe(福島県郡山市)
七月堂(世田谷区)
本屋B&B(世田谷区)
書肆のらぼう(webshop・今春オープン予定)
弥生坂緑の本棚(文京区)
Daily Practice Books(渋谷区・6月オープン予定)
平井の本棚(江戸川区)
双子のライオン堂(港区)
ふやふや堂(群馬県桐生市)
books電線の鳥(長野県松本市)
葉ね文庫(大阪市)
1003(神戸市)
自由港書店(神戸市)
Book Cafe ULM(神戸市)
Brisées(岡山市)
本屋UNLEARN(広島県福山市)
本のあるところajiro(福岡市)
ナツメ書店(福岡市)
カモシカ書店(大分市)

2021-03-14

海と出会う、なんどでも。



フランスでの自主隔離期間が終わり、日曜日の海へ行く。車両制限をしているらしく、道路はからっぽだった。道路をひとつ渡ると、もうそこは大好きな海だ。

2021-03-11

赤い糸の巻かれた家



今回の帰国はこれまででいちばん長かったけれど、いちばん時間がなかった。その時間のあいまを縫って、きわめてプライベートな事情から大塚泰子さんのアトリエにうかがう。壁一面に白い模型のならんだ静謐な空間。人間にとっての家が、どれだけ〈記憶としての装置〉たりうるのかについて、実体験をもとにつかのま語り合う。


頂戴した『one』miniを自宅でひらいてみた。


小さな家と家とのあいだを、毛細血管のような赤い糸が何重にも取り巻いている。ひとつだけ矩形の外にこぼれた家があるが、それにも赤い糸がしっかりと巻かれていた。


ちなみに大塚さんからは「このオブジェは壁にかけてください」と言われた。そうすると赤い糸がこぼれた家を吊るかたちになるだろう。まるで命綱のように。

2021-03-09

『フラワーズ・カンフー』はどこで買えるのか?



あのですね、今朝メールをひらいたら、スケザネさんからこんなにもわくわくする番組告知画像が届いていたんです。とくにたまらないのが\インタビュー/ってとこ。可愛い。動画の撮影日は薬を飲み忘れてしまい暗い顔をしていたのですが、それを補って余りある陽気なデザインで嬉しいです。成原デザイン事務所さん、ありがとうございます。番組は今週土曜日21時からプレミア公開。チャンネル登録をしてお待ちください。


ここ二、三日、『フラワーズ・カンフー』はどこで買えるのでしょうか?との問い合わせを頂戴しております。実は版元の在庫はすでに品切れで、現在電子書籍&PODでの再版を進めているところです。今後は一部のネット書店での販売となります。

またそれに伴い、わたしの保管していた在庫も整理しようと思い立ち、今日から書店さんに卸しはじめました。フランスから発送するため少々時間がかかりますが、納入がすみましたら卸し先の書店をこのブログでお知らせします。

そんな悠長に待てない!いますぐ紙の本がほしい!という方は小津に直接メールください。定価でお譲りします(送料無料です)。本屋さんからのご連絡もお待ちしております。ちなみにさっき調べた限りでは、Brisées蛙軒のオンラインショップには在庫があるようです。

◆3・15追記 以下の本屋さんに卸しました。到着には2週間〜3週間かかります。個人の方のご注文は、あと数名ならだいじょうぶです。

がたんごとん(webshop)
Go Go Round This World! Books&Cafe(福島県郡山市)
七月堂(世田谷区)
本屋B&B(世田谷区)
書誌のらぼう(webshop・今春オープン予定)
弥生坂緑の本棚(文京区)
平井の本弾(江戸川区)
双子のライオン堂(港区)
books電線の鳥(長野県松本市)
葉ね文庫(大阪市)
1003(神戸市)
自由港書店(神戸市)
Book Cafe ULM(神戸市)
Brisées(岡山市)
本屋UNLEARN(広島県福山市)

2021-03-08

番組出演、あれこれ。



春のヴァカンスが終わった。今日から人々は仕事に邁進するのだろうと思いきや、朝のニュースではもう夏のヴァカンスの話をしていて、頭をなぐられたような衝撃を受ける。

* * *

【スケザネ図書館】スケザネ図書館に出演します。放送は3/13(土)21:00から。テーマは本にまつわるあれこれ(アーカイブ残ります)。自分の趣味を語るのは恥ずかしいので変化球を投げっぱなしでした。最後に詩歌の価値に関する話もしています。スケザネさんご本人については番組終了後に書く予定。

【平井の本棚読書会】昨年12月におこなった読書会の様子が公開されました(有料の会ゆえダイジェスト版の公開です)。自宅からの中継だったので始終リラックスしつつ、はじめて漢詩を読む方を対象に漢詩の探し方、訳し方、面白さなどについて語っています。『いつかたこぶねになる日』制作秘話の一面も。


【NHK俳句】3月7日放映分に出演。スタジオに人が多くて、ものすごく怯えてしまいました。しかも小澤實さんから「テレビの向こうには句会や結社に参加せずに一人で書いている人が大勢います。小津さんの存在はそうした人たちの励みになると思うんです」と言われ、恐縮まですることに。

またその一方で、人と話すってこんなにも発見があるんだな、と感動もしました。たとえば、わたしの犬にまつわるエピソードを小澤さんがマグリットの世界につなげたところは「たしかにそうかも」とびっくりしましたし、これは放映されなかったのですけれど、小澤さんに〈春や鳴る夜汽車シリングシリングと〉の制作過程について質問されて「シリングという昔のイギリス通貨が、汽車がしゅっしゅっぽっぽと走る際の『しゅっしゅ』の音と似てるなと思って騙し絵的に嵌め込んでみたんです。イギリスと汽車って相性もいいですし」云々と答えながら、ああ、この「騙し絵的」という発想がまさしくマグリット的じゃん!と再認しました。さらに〈夢殿やくらげの脚をくしけづる〉に関して、夢殿に棲むくらげという見立てが宮殿みたいな貝に棲むたこぶねと完全に相似形だったのが、今回はじめて悟った衝撃的事実です。あとはGAGの宮戸さんから「小津さんってピン芸人みたいですね。ピン芸人ってものすごく変わった人が多いんですよ」と言われたのも、ふわっと、新鮮でした。(*写真は小澤さんから頂戴したものです。)

2021-03-07

歌仙「たこぶねの巻」



『いつかたこぶねになる日』の刊行記念連句という驚きの贈り物をいただく。羊我堂さん、冬泉さん、胃齋さん、須藤岳史さん、森尾みづなさん、季何さん、綉綉さんといったいつもの連衆に加え、なんと挙句が抜け芝さん。小津にちなんだあれこれを盛り込んでくださったりもして、とても華やかな歌仙になっていました。ありがとうございます。



連句って流れを楽しむものですけれど、今回はそれぞれの句からお気に入りを選んでみました。それがこちら。

今生の汽笛に触れて融ける雪  羊我堂
鳥の巣髪で逍遥游へ  冬泉
火星にも運河ある日の花筏  胃齋
ウィッシュリストに靴を並べて  岳史
永日鳧(ながきひのにはとりかぜをこえにけり)  みづな
ご自愛を!月に憑かれたピエロたち  季何
遠ざかる夜景に降れる花の雨  綉綉
うららかにしてすこし空腹  抜け芝

先日、池澤さんとの対談でも話したことですが、自分にとって連句というのはすこぶる教育的な一面があって、エッセイを書くときに無意識に参考にしているんです。次の一手がひきよせる世界のひろがりを、連句ほど味わい抜いてきた遊芸はないと思いますし、軽妙であり複雑でもあるといった姿形もまた好ましいところです。

2021-03-06

ここまで人がいないとは。





訪日の飛行機は4人しか客が乗っていなかったのだけど、帰仏も似たような感じで、羽田のパリ行き乗り場は上の写真のように人影がなかった。飛行機の中では3時間くらい指をならしながら歌をうたってすごした。飛行機の中で歌をうたえるってすごくないですか。で、シャルル・ドゴール空港についたらついたで、また下の写真のような光景がひろがっていた。誰もいない。カンフー映画の撮影に良さそう…。