2021-03-11

赤い糸の巻かれた家



今回の帰国はこれまででいちばん長かったけれど、いちばん時間がなかった。その時間のあいまを縫って、きわめてプライベートな事情から大塚泰子さんのアトリエにうかがう。壁一面に白い模型のならんだ静謐な空間。人間にとっての家が、どれだけ〈記憶としての装置〉たりうるのかについて、実体験をもとにつかのま語り合う。


頂戴した『one』miniを自宅でひらいてみた。


小さな家と家とのあいだを、毛細血管のような赤い糸が何重にも取り巻いている。ひとつだけ矩形の外にこぼれた家があるが、それにも赤い糸がしっかりと巻かれていた。


ちなみに大塚さんからは「このオブジェは壁にかけてください」と言われた。そうすると赤い糸がこぼれた家を吊るかたちになるだろう。まるで命綱のように。