2021-04-25

日曜日の発見





2021年の年賀状を整理していたら、こんな切手の貼ってある封筒を見つけた。

葉っぱのつき方、球果のかたち、どこからどう見ても松の枝である。雪の松と日の出だなんて完全に日本の正月ではないか。念のために樅の木を調べると、樅の葉は枝全体に生えているし球果も細長い。クリスマスツリーでよく知る通りだ。

これを送ってくれたのはニースに住む夫のともだち。中に入っていた年賀状はオリジナルデザインで、コート・ダジュールの風景だった。切手とは正反対の雰囲気。

2021-04-24

架空の島も昏れてゆくのか





いま巻いている歌仙、こんどは雑の短句が回ってきた。前句を見ると匂い付けでいけそう。77はすごく苦手なので、とりあえず何も考えずじゃんじゃんつくり、使えそうなのを3句選んでメールした。今日つくったのは17句(季語あり2句を含む)。

生まれてみれば翳濃ゆき秋
すきまだらけの過去が深まる
かばんにつめるありふれし日は

戸は鳴るたとへ風死せるとも
もつるるままに言の葉を編み
いやますものの影のかずかず

寄木細工の生のじぐざぐ
世界をめぐる劇は終はりぬ
架空の島も昏れてゆくのか

夢咬みながらうたふ貝殻
おいでおいでと濡れ髪のまま
泡をなめたり詩をきざんだり

賽投げられし夜のながれだま 
コルクを抜いて夜をひるがへす
存在と無とポケツトの『城』

きみが梢に結び文とは
なんで光の帆が鳴つてゐる

2021-04-23

風のすごい日





さいきん知り合った鳥にくわしい方がこんなサイトを教えてくれた。何してるだ〜という頁の鳥がとても表情豊か。こういうのを見ると望遠レンズが欲しくなる。わたしに使えると思わないから無駄遣いせずにすんでいるものの、気持ちは欲しい。

今日は郵便局に用事があったのだけれど、予約の時間を間違えて一時間も早く着いてしまった。ロックダウン中ゆえ周辺のカフェはどこも閉店。仕方がないので郵便局の向かいの公園のベンチにすわって待つことにした。公園には何十人もの人がいた。男女比は9:1くらい。圧倒的に男の人が多い。男の人たちはあらゆるところで井戸端会議をする。自宅の前にも、いつも5、6人くらい、多いときは10人くらい男の人がいる。今日は風がすごい。ほんとすごかった。あたまに葉っぱがいっぱいくっついた。

2021-04-17

香月泰男の風と水





ヴァカンス中もずっと働いていたけれど、今日は晴れておやすみ。わーいわーいわーい。午前中はハイクノミカタの原稿を書いてセクト・ポクリット管理人の堀切さんに送り、マティス美術館で催された友人のダンスを観、武術仲間に夏合宿の案内を回した。昼は家人の焼いたパンを食べ、本棚の整理をし、そしていま海辺の散歩から帰ってきたところ。


話はとんで、わたしは学生のころから香月泰男が好きで、同じポスターを何枚も購入し、一番ひどい時期は自宅だけでなく、友人宅やら職場やらに貼って眺めてたほど愛をわずらってました。どのへんが好きか考えるに、あまりに絞りがたく、それでも身悶えしつつ無理やり言うと、まずもって水と風の表現がいい。あと画風にこだわりがないところ。ほんといろんな描き方をしますよね香月って。花も、いきものも、風景も好きですが、やっぱり愛の原点は風と水です、はい。画像は上から順に「風」「釣り床」「渚」。「渚」は絶筆で、ナホトカの光景。

2021-04-13

ワクチン接種の風景





句集『フラワーズ・カンフー』のkindle版が「ふらんす堂電子書籍1000円シリーズ」から発売されました。なおオリジナル版の最後の在庫はこちらの20店舗でお取り扱い中です。

* * *

わりとさいきんまで「コロナワクチン接種の予約案内が届いても、仕事が休めないから打ちに行けない」と言う人が多かったけれど、いまはヴァカンス中。家人もネットで予約して、朝の8時半からワクチン接種に出かけました(医療および学校関係者は年齢に関係なく打てる)。ワクチンはファイザー製で無料。と、ここまで書いたところで、ちょうど家人が帰ってきて写真をくれました。上が会場正面。屋内は22のブースに仕切られていて、接種後は椅子に座って15分休息をとるそうです。

2021-04-10

湊禎佳『古今琉球風物歌集』





私がはじめて琉球の音楽や言葉にふれたのは細野晴臣や坂本龍一のレコードだったんですが、そのころは「音楽の音」として楽しむばかりで、「言葉の音」としてはあまりに審美主義的(標本的)だなあと子供心に感じていたんです。で、けっきょく佐渡山豊のドゥチュイムニィを聴くまで琉球語に他者性を感じたことがありませんでした。ドゥチュイムニィには、琉球語で始まる歌詞が日本語に切り替わる瞬間、目の前の景色があっと変容する感覚があった。なにげない、それでいて暴力的な感覚が。嘉手苅林昌の詞「唐(とお)ぬ世(ゆ)から大和ぬ世 大和ぬ世からアメリカ世 みじらさ変たるくぬ沖縄(うちな)」をまるっと本歌取りしたサビも言葉として新鮮で。

と、こんな話を書くのは、去年の秋に知人から頂戴した湊禎佳『古今琉球風物歌集』を今日また取り出して「アメリカ世」「米和ぬ世」という章をながめたから。

ゲート前に根を生やしある国民を引き抜く県警 根菜採るがに  湊禎佳

琉球米軍司令部(ライカム)の跡地にいづこの国のやら砦のやうなショッピングモール 

琉歌も載っています。気ままにいくつか。

ゆくえ悟り知る つゆの世のえにし 尽きしなき人の 青の死生

夜ふね漕がれゆく 水沫うれはしき こころゆれまどふ ゆくらゆくら

2021-04-08

わがおもふその心いつぱい





今日は俳句を10句つくる。ものすごく楽しんでつくった。にっこりして外に出かけ、海の青さにじーんとし、帰ってきてエッセイの出典一覧をつくるために江戸の狂歌本を読み直していたら「職人恋歌合で桶工の詠んだ歌」という詞書のついた次の歌を見つけて、また楽しくなった。

君が顔うつしてほしや水桶のわがおもふその心いつぱい

なんて素敵な下句だろう。やっぱり職人歌合っていいな。しばらくは水をのぞくたびに思い出してきゅんとしそう。

2021-04-05

明治時代の「ハッピー」





目の前にある紙をめくったら、十八公堂主人『珍聞奇談逸話集』の序文が見えた。「ハッピー」の一語がなんかかわいい。全文引用してみます。

滑稽とは唐人の寝言に多智円曲の象(かたち)なりといへり兎角人間は知恵をたつぷり持て円(まる)く婉(うつく)しく面白おかしく暮らさねば此世に生れた甲斐があるまいと悟つて見れば文章も子曰(しのたまはく)では滑稽コーと夜が明けずそこで昔の人の得意顔なる滑稽文をいささか取集め世の石部金吉兜流の先生達のお目にかくることとなしぬ万一お気に叶ふ所もあるなれば只に編者のハッピーなるのみならず書肆(ほんや)さん達の金もふけともなるべし。

干時(ときに)明治三十あまりふたつのとし文月の末
十八公堂主人識す

この手の文体多いですよね明治時代って。江戸時代の狂文をそのままそっくり引き継いだような。

2021-04-03

ガーリーの最終形態





今日から3週間のヴァカンスがはじまる。

きのう、俳句を知らない知り合いに俳句のつくり方をちょっと説明したら、「アルゲリッチ」と「別府」の取り合わせについての議論になり、そこから最もガーリーなピアニストは誰かといった話題に流れ、ガーリーの最終形態は上原ひろみだよね、と双方意見が一致した。ちなみに「明るくて強そう」ってのがわたしたちのガーリーの定義です。