2023-02-22

モナコの一日





朝からモナコへ行き、レーニエ3世の自動車コレクションを見学しました。展示品は大公の蒐集したクラシックカー、プライベートカー、そしてレーシングカーの全70台。プライベートカーにはそれぞれ家族にまつわるエピソードや記録フィルムが添えられていて、さすが個人蔵といったところ。


ALFA ROMEO 1600 GIULIA SPIDER。近所を移動するときに乗っていた車。


CYCLE CAR SUPER LELVÊQUE。時速70キロ。


LEYAT HELICA。二人乗り。時速119キロ。燃費が良い反面、音と埃がひどかったそうで。LEYAT は「翼のない飛行機」でおなじみの(と書いてありました。そうなのですか?)フランスの自動車メーカー。


FIAT 600 JOLLY DE PLAGE。見たまんまのビーチカー。サンドカラーの天蓋を装備し、シートはラタン製で雰囲気づくり。


手前がJORDAN TYPE 193。奥がLOTUS E21。

2023-02-19

小川軽舟『無辺』がとてもいい。





小川軽舟『無辺』がとてもよかった。おすすめ。みんなに読んでほしい。とにかく大人の句集なの。言葉の選び方と運び方にゆとりがあって、普通のことを言うのにも爽やかな色気が香る。そして季語が絶妙。良い句がありすぎるので、適当に頁をひらいたところから引用します。

駅弁は窓に買ひたし山若葉

言ってることが正論。まじでそう。しかも季語「山若葉」の、駅弁を美味しくみせる演出力ときたらもう!

一階に載せて二階や氷水

住居(町家?)の様式をシンプルに描写。んでもって「氷水」で情緒の加味に成功。言葉選びへの無頓着をあくまで装うダンディズムに痺れる。

作り滝商談済みて縁談に

昭和の映画みたいなシチュエーションが逆にクール。にしても、ううむ、季語「作り滝」に仕組まれた劇化の巧みさが憎いわ。

単車駆る少女の恋や葉月潮

旧暦八月十五日の大潮を意味する季語「葉月潮」がキマってる!ってかこんなのぱっと思いつく?せつない想いがあふれそうだよ。自分で単車を運転してるのも熱い。ぬごごごご。

漂着のごと老人の日向ぼこ

長い話を縮めていえば、この世の生はかくのごとしよ。

見上げたる闇透明や冬銀河

空や海が透明なのは知ってたけれど、闇もまた透明だったとは。ユーレカ案件。

石鹸玉吹き従へて橋渡る

きれい。かわいい。そして音楽が聞こえる。真横から見ると完璧なコンポジション。切り絵にしたい。

旗立ててチキンライスの孤島に夏

遊び心たっぷりに料理されてしまった夏の孤島。

生者みな舌濡れてをり秋の風

そこはかとなくシチュアシオニストのような匂いもして、これはとても良い湿り気。血潮の鳴る風景。

音知らぬ宇宙空間年歩む

季語 「年歩む」が宇宙空間にぴったりすぎる。アトムの足音を創造した伝説の音響デザイナー大野松雄に「存在する音に僕は興味がない」との名言があるけれど、この句からは宇宙そのものの足音が聞こえます。

山羊の仔に巻貝の角風光る

世界よ。世界よ。きらきらしてる。すさまじく、神々しく。

古靴に慕ひ寄るなり蟾蜍

「古靴」と「蟾蜍」のとりあわせが引き出すヒストリーの豊かさが実に素晴らしい。「慕ひ寄るなり」のちょっと言い過ぎの感じもよくて、徒らな情味がユーモラス。

終りなく雪こみあげる夜空かな

この世界の真実に遭遇してしまった感覚。

2023-02-12

カルナヴァルの週末





土曜日の昼は年金関係のデモ。三人の知り合いと会う。午後はカルナヴァルの開会式を観覧。今朝の新聞によると20万人の人出だったらしい。それにしてもこの種のイベントで毎度しみじみ思うのはMCという職業の凄さ。相方なし、ゲストなしの生中継で4時間みっちり喋りつづけた司会者の職人技にはおひねりを投げたいくらいだった。マンデリューのミモザ祭り、マントンのレモン祭りも同日から始まり、実際はまだまだ春の気候とはいえないけれど、とりあえずバケツいっぱいのミモザを確保。


函館の蔦屋書店で『花と夜盗』フェアが始まりました。蔦屋書店さんのインスタグラムによりますとこのような特典がついてくるみたいです。お近くにお住まいの方はぜひ足をお運びいただけますと幸いです。

2023-02-06

麻酔する夕方





季刊アンソロジストの連載「存在のためのふわふわした組曲」は小説のようなものを書きました。それから月刊すばるの連載「空耳放浪記」は百年前のパリジェンヌについて書きました。ひまでひまでしょうがない方もしいらっしゃいましたら、ちょいと読んでみていただけますと幸いです。


年末、知人が「さいきん仏像を買ったんだよ」と写真を見せてくれたのだが、先日また別の知人から「僕の部屋の仏像見てよ〜」と写真が送られてきた。みなさんどうしてそんなものを部屋に飾っているのでしょうか。さらに解せないのが、二人とも仏像の下にコースターを敷いていることである(つまり仏像はグラスほどの大きさってことだ)。巷でそういうインテリアのテレビドラマでもやっているのかしら。

夕方から歯医者へ。ここの医者は職場に子犬を連れてきている。まだ家で留守番できないくらい小さいからである。毎回会うのが楽しみなのよ、と知人に言うと「去年の夏に死んだうちの犬の生まれ変わりかも。先生によろしく言っておいてくれ」と頼まれ、それを先生に伝えたところ「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とのことだった。帰路、電車の中から「だいじょうぶだそうです」と知人にメール。治療は麻酔が効きすぎて、まだ顔半分がいかれている。今ってほんのちょっと削るだけでも麻酔をするのね。

2023-02-02

餃子の本質について





昨日、新しい本の打ち合わせをしたあと閃きがあって、全体の目次というか執筆計画表のようなものをつくってみた。そしたら8割方その計画表通りにやればいいことが判明し、びっくりしてしまった。本を書き出す前に全体像が見渡せたのって初めて。スマホをやめたおかげで賢くなったのかもしれない。これからの自分にますます期待したい。

数年前から餃子が流行しているのだけれど、ついに近所のスーパーにも餃子が登場した。ただ皮の色からしてふすま入りっぽいし、具材が豆腐とコリアンダーなので、ちゃんと餃子の本質を突いているか怪しい。試す前に言うのもなんだがあまりおいしそうには見えないので、疲れて疲れてもう料理なんてしたくないって日が来たら買ってみよう。

ちなみに、我が家のお好み焼きのレシピは強力粉と卵とキャベツがベースで、タンパク質は燻製豆腐を豚こま風にそぎ切りにし、オリーブオイルで焼き色をつけたものを入れる。青のりの代用品はバジルだ。こう書いてみると果たしてそれはお好み焼きなのか?という気もするが、とにかくこの料理をうちの夫は「餃子そっくり」と言ってマヨ醤油&おろしニンニクで食べる。実はわたしもそう思う。餃子の味の本質は強力粉だということであろうか。