2019-03-18

広々としたさようなら



「江戸職人歌合」の二十番、屋根葺VS左官の対戦が渋い。

○屋根葺
月影の洩るるばかりに板屋根の軒端を少し葺き残さばや
○左官
中塗りに闇を残して屋根裏の漆喰白き秋の夜の月

軒端に空(くう)をこしらえたり、壁中に闇を閉じ込めたり。職人というのは風流ですね。屋根職人をもうひとつ。

行く雁を屋根で見送る別れかな
檜皮司「職人尽発句合」

とても広々としたさようなら。檜皮司と言うからには屋根もさぞ立派なのでしょう。

職業を添えるだけで作品の見え方が変わるのが面白い。今後もこの手の歌句を拾ってみるつもり(本当に気が向いた時だけ)。