2019-03-02

スチーム礼賛





今週の「土曜日の読書」ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』から悲しい幽霊について書きました。

今回は松岡光治編『ギッシングを通して見る後期ヴィクトリア朝の社会と文化』や『ギッシングの世界――全体像の解明をめざして』がネットで全文公開されていたので、基本情報を押さえるのが簡単でした。後者の第十六章「自己」は『ヘンリー・ライクロフトの私記』のファンは目を通すと楽しいかも、です。

それにしてもヴィクトリア朝の文学というのは面白いですよね。個人的には「文学」ではなくてあの時代の「言葉のリズム」といったほうがしっくりくるのですけれど、とにかく人類史における未曾有のダイナミズム期であることがひしひしと伝わってくるし、素晴らしい詩人もいっぱい。私は家にH.G.ウェルズの絵本があったことがきっかけでこの時代にはまったんです(コナン・ドイルは大人になるまで読んだことがなかった)。もう本当に好きで、大学の卒論もヴィクトリア朝のユートピア思想で書いたくらい萌え全開で生きていました。

写真はBABCOCK AND WILCOX製の発電装置。週刊俳句第563号の表紙に使用してもらったもの。ヴィクトリア朝に漂うオーラって、つまるところスチームなんだろうなと私は思っています。