2022-04-10

物作りの馬力



現在発売中の「文藝春秋」5月号の巻頭随筆欄に連作「よるはみなもの」を寄稿しています。雑誌を手にとる機会がありましたらご覧いただけますと幸いです。




きのうのMUCEM企画展のつづき。上の画像は国民戦線(フランスの政党「国民連合」の旧党名)による1992年のポスター。彼らが敵とみなす「社会主義、移民、麻薬、拝金主義」の頭文字を縦読みするとフランス語のエイズ(SIDA)という単語になる仕掛け。これ、うまく写真が撮れなかったので、こちらの写真を借りました。

エイズ撲滅のためのデモを題材にしたシェリ・サンバ「エイズキャンペーンを支持する行進」1988年。ルイ・ヴィトンのトラベルブックシリーズでも知られるシェリ・サンバのファンは多いと思います。わたしもユーモアを湛えた看板風の絵面で社会を寓意的に描く、彼のカーニヴァル的雑駁さが好きです。なにより素敵なのは画の力強さ。いささかもメッセージに負けていません。この作品は134,5x200cmの油彩なのですが、印象としては壁一面の大作に感じられました。国民戦線のポスターを見て怖気をふるったあとだったのでなおのこと、彼の物作りの馬力に励まされました。