2022-12-10

ハードボイルドに、彼女は海を語った





先日ご紹介した佐藤りえさんの個人誌『九重』ですが、しばらく拙宅には届かないだろうと思っていたらもう到着しました。おまけがいっぱいで、突然サンタクロースがやってきたみたいです。


こちらが『九重』と1個目のおまけ「怪談牡丹灯籠双六」。


そしてこれが2個目のおまけ。佐藤りえさんの豆本句集を収納する箱です。


さっそく収納してみました。


空想科学俳句集『ぺこぽこ宇宙』、探偵俳句集『いるか探偵QPQP』、幻想怪奇俳句集『良い闇や』。この3冊をお持ちの方、こちらのフォームから箱を注文(無料)できるそうです。

海沿いのポストは海を向いていない眩しかりけり晩夏の潮
佐藤りえ

『九重』誌上歌集『森の中』より。この歌の「海を向いていない」という情景把握、すごくないですか。

いえ、確かに言われてみればそうなんです。あたりまえのことを言っている。そうなんですけど、でも詩歌的抒情って、ふつうはやたらと海を向きたがるものなんですよ。

もうね、いつだってなんだって、安直に海を向いてるって決まってるんです笑。

だからこそ「海を向いていない」というリアルな描写が胸に刺さります。またこの衝撃を回収する下の句の光景が巧み。一首を立体化する情感の谷折り(海を向いていないポスト)と山折り(眩しい晩夏の潮)との襞が深く、結語の「潮」も圧巻で痺れました。