今日のお昼はガレットとシードル。
ガレットの上には、アヴォカドを薄く並べ、生ハムを一枚のせた。で、その隣に山盛りのベビーリーフ。飲み物は、ほんとは炭酸水がよかったのだけど、冷蔵庫をのぞいたらなかった。だが考えるに、ガレットにとってシードルは調味料みたいなもの。水ではその役はつとまらない。水は舌の上に残るものをきれいにさらっていく。料理の余韻を切り捨ててしまう。
ガレットを食べる。チーズの濃厚な味がまず広がり、次にアヴォカドの柔らかな甘みがゆっくりと追いかけてくる。ときおり生ハムの塩気がひょいと顔を出す。生地の端の部分のカリッとした食感と香ばしさも舌と鼻にうれしい。
そこへシードルを飲む。口の中がさっぱりと軽くなる。だが洗い流しすぎはしない。いろんな風味が、ちょうど春の終わりと夏の始まりのさかいにわだかまるみたいに、名残を引きずったままじんわりと潰える、そのくらいの感じ。
にわかに、失われたガレットの味が恋しくなる。フォークをうごかす。飲んでは食べ、食べては飲んで、そうやって交互に味わっているうちに、ふと思う。これって会話みたいだな、と。ひとくち、またひとくち。口の中で、ガレットが何か言う。それにシードルが答える。あるいは、シードルが先に問いかけて、それにガレットが静かに返事をする。そんな気がした。
結局、お昼のあいだじゅう、私はこのふたつのやりとりを黙って味わっていた。そして、最後のひとくちを飲み終えたとき、なんだかひとりごとのように「これでよかったのだ」とつぶやいていた。自分に言ったのか、ふたつに言ったのか、よくわからないけれど。
ガレットの上には、アヴォカドを薄く並べ、生ハムを一枚のせた。で、その隣に山盛りのベビーリーフ。飲み物は、ほんとは炭酸水がよかったのだけど、冷蔵庫をのぞいたらなかった。だが考えるに、ガレットにとってシードルは調味料みたいなもの。水ではその役はつとまらない。水は舌の上に残るものをきれいにさらっていく。料理の余韻を切り捨ててしまう。
ガレットを食べる。チーズの濃厚な味がまず広がり、次にアヴォカドの柔らかな甘みがゆっくりと追いかけてくる。ときおり生ハムの塩気がひょいと顔を出す。生地の端の部分のカリッとした食感と香ばしさも舌と鼻にうれしい。
そこへシードルを飲む。口の中がさっぱりと軽くなる。だが洗い流しすぎはしない。いろんな風味が、ちょうど春の終わりと夏の始まりのさかいにわだかまるみたいに、名残を引きずったままじんわりと潰える、そのくらいの感じ。
にわかに、失われたガレットの味が恋しくなる。フォークをうごかす。飲んでは食べ、食べては飲んで、そうやって交互に味わっているうちに、ふと思う。これって会話みたいだな、と。ひとくち、またひとくち。口の中で、ガレットが何か言う。それにシードルが答える。あるいは、シードルが先に問いかけて、それにガレットが静かに返事をする。そんな気がした。
結局、お昼のあいだじゅう、私はこのふたつのやりとりを黙って味わっていた。そして、最後のひとくちを飲み終えたとき、なんだかひとりごとのように「これでよかったのだ」とつぶやいていた。自分に言ったのか、ふたつに言ったのか、よくわからないけれど。
初芝居あやかしの面ひとつ掛け今宵の嘘に命を賭ける
袖口をしっかり直す役者の手今年最初の幕が上がった
役者たち新春の香をまとい立つ舞台の板は軋みながらも
華やかな紅の化粧を塗り直し役者のまなこ新春を裂く
初芝居ゆめとうつつの境目を破る拍手の音をこそ泣かめ
初芝居虚構の街を駆けめぐり行方知れずの俺の言葉よ
芝居終え虚無を抱えて戻る夜人類絶えし新年の路地