2017-10-21

宇宙間について・後編



句集『途中』の制御しがたい遠近&重量感覚は、身体を詠んだ句にも及んでいる。

澄む水に浮かんだままの主人公  松井真吾
吊革のなくて摑んだ夏の山  〃
生命線背中まで伸び秋終わる 〃

一句目は「主人公」が「浮かんだまま」というのが絶妙におぼつかない。二句目は摑んだものが大きすぎる。三句目は命の目盛りが伸びすぎだ。

で、措辞のリズムや、脱超越的な身体描写などが、やっぱり現代川柳っぽい。

そういえば自分は、現代川柳で割とよくある〈脱超越的身体〉を俳句に導入できないかしらと思い、仮に俳句における身体把握が人文学的だとするならば川柳のそれは工学的であり、ロマン主義に陥らずに身体を脱臼させる〈狂度〉が技法として行き渡っているといったメモや、普川素床さんの川柳における身体的〈狂度〉をめぐる放談や、福田若之さんの俳句を前田一石さんの川柳と比較して俳句的身体の非脱臼的傾向を述べた日記(これ、なぜか枕が関心を集めるようですが本題は中盤以降です)などを書いたことがあるのだけれど、松井さんの句集を読むと、川柳と俳句とを行き来するのはそう難しくないのかも、とちょっと胸がはずむ。

ところで松井さん、普川素床さんとは句会仲間らしい。普川さんと句会をするってどんな感じなのだろう? そこも宇宙間的文脈で大いに気になるところだ。

できたての虹からあふれだす達磨  松井真吾

参考リンク
【みみず・ぶっくす42】川柳とその狂度
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第1回 また終わるために-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第2回 ねえジョウ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第3回 いざ最悪の方へ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第4回 まだもぞもぞ-
【連載放談】普川素床読解入門 小津夜景×柳本々々-第5回 しあわせな日々-
〈世界〉の手前から フラワーズ・カンフー * 小津夜景日記