2024-01-16

「読む」こととの距離感 『ロゴスと巻貝』著者インタビュー





「本チャンネル」はブック・コーディネーターの内沼晋太郎さんをメインホストに、本にまつわるあらゆることを扱うYouTube番組。その看板コンテンツ「今日発売の気になる新刊」に出演しました。

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自分のことを書くのって難しい。今回の本でもそれをひしひしと感じました。なかでも「人は一人で生きているわけじゃないから、自分のことを書こうとすると周囲にいる人たちの人生を大なり小なり暴露することになってしまう」というジレンマ。これがますます浮き彫りになり、いったいどう向き合えばいいのか考え込むことが多々ありました。

『ロゴスと巻貝』にはいろんな人が登場しますが、個人のプライバシーを尊重して、アスタルテ書房のササキさん以外は仮名を採用しています。もう二度と交わることのない人たちも少なくないけれど、でも、たとえそうであっても、彼らが語ったことを都合よく利用することは許されないと思い、慎重に、控えめに、本当に控えめに書きました。あと家族を出すというのも一筋縄ではいかない難問なんですよね。どんな家庭、どんな一族にも平坦ではない歴史があり、ペンを持つ者がそこに独断で踏み込むことの是非はいつだって悩ましいところです。

「人には尊厳がある」というのは、わたしがエッセイを書きながらつねに思い起こすことです。他者の人生は決してエッセイの具ではありません。書くという行為によって他者の実存を実は盗んでいるんじゃないかと自問したり、自分の言葉と他者の言葉との境界線をきちんと見極めているか気にかけたり、またあるいはごくシンプルに、彼らがこのエッセイを読んで「そういう意味で言ったんじゃない」と驚かないか想像したり。そんなことを忘れないようにしながら綴ったこのエッセイ集、ちょっと読んでみようかな、と思っていただけると嬉しいです。