2024-12-16

まだ何も飾らない日



エスプレッソマシンをあつかう手つきが、少しこなれてきた。小さな台所も急に落ち着いて、なんだか背が伸びたみたいに感じる。マシンの上の壁には、空っぽのフレームが四つ並んでいる。新しい道具に合わせるのだ。

パソコンをひらき、壁に飾る写真を探す。とりあえず二枚選んだ。一枚は駅の小屋。錆びたトタン屋根、ひび割れたコンクリート、炎帝に射抜かれた影。そこに漂うのは、ひと昔前の、田舎の夏のにおいである。もう一枚は海。ひろくて遠い。どちらも、ふっと奥に引き込まれる感じがする。写真の奥へ、奥へと入っていけそうな気がする。

蒸気上げ正確無比なマシン鳴る抽出時間十二秒ぴたり
濃密な一滴ごとの正確さ小宇宙生む蒸気の技術
ちょっと待てエスプレッソがそう言ったそんな急ぐな人生だってさ