フランスの社会についてなにか書いてください、とたまに依頼があるのですが、これがなかなかできません。
理由はいくつかあって、そのひとつがフランス社会の「うわさ話」をしたくない、というきもちがどうやらかなり強いらしいことです。
それから、自分の体験をおおっぴらにしたくないとか、周囲で起こった出来事を当事者たちの許可なく書きたくないなどといったきもちもあったりします。
しかしそれよりも大きな要因は、わたしと言葉との関係です。わたしと言葉とのつきあいは、たっぷりの沈黙という在り方が基本で、らくがきめいたことを書き出したのもここ数年、それも俳句という、とても小さな、ほんの一呼吸のスタイルを手にしました。そしてその一呼吸さえも、たっぷりの沈黙の海にもぐってこそ呟くことのできる音楽なのでした。