2021-06-19

手をオカリナのやうに過ごした





今年はじめて海で泳ぐ。これから2ヶ月間、毎日泳げると思うと幸せすぎる。海に入ると、かんたんに瞑想状態になれるのもうれしい。陸の上ではこんなふうにはいかないから、水の力ってすごいなって思う。

さいきんはずっと考え事をしていた。こんなに考えたの何年ぶりだろうってくらい。何を考えてたのかというと「いい文章ってどういうふうにできてるんだろう?」ってこと。こんなことを考えるなんて頭が変になっていたのかも。人の話もきいてみようと思い、保坂和志「小説的思考塾vol.4」も視聴した(すごくよかった)。

そういえば、喋っている保坂和志さんを見るのってその日が初めてだったんですが、声や喋り方に違和感がなさすぎて、見終わるまでそのことに気づかなかったんですよ。絵描きはそんなことないのに、物書きが話しているところを目撃すると、ときどき「え?」ってなりますよね? なりません? 想像してた声との違いにたじろぐというか。彼らは「語る」のが仕事だし、文体というのはフィジカルなものだから、読み手はなにかしらの声をあらかじめ強く思い描いている。村上春樹の声と喋りを初めて聞いたときなんか、もうわたし、びっくりどころじゃなかったな。

D連句は雑の短句。いつもどおりわしゃわしゃっと書いて、ちょうどいいのをメールで送る。

うそもほんとも鳥だつたころ
雲雀を燃やす木々のたてがみ
寝息のにじむ古き絵葉書
色を失くせし虹の嫁入り
タイムマシンの静かなる夜
手をオカリナのやうに過ごした