2023-06-07

タイムカプセルの村





海水浴の季節が迫り、青い空と海のエネルギーがふつふつと解き放たれようとしている。

週末ボーリュー=シュル=メールへ出かけた。所要時間10分、電車でたったの2駅先の村だけど、降りた途端、いま乗った電車はタイムカプセルだったのかと思うほど雰囲気がちがった。昔っぽいのどかさなの。切り立った崖に貼りつくようにオレンジ色の瓦屋根を乗せた家々が建ち、レモンなどの柑橘類、ブーゲンビリア、オリーブの木のあいだに埋もれた石壁は太陽に照らされて濡れた蜜のようだった。アマルフィ風の内装のレストランでパエリアを食べ、午後は膝まで海に入る。水温はたぶん22度くらい。

すばる7月号発売中です。今回は「抜け殻の堪えがたき甘さ」と題して時間と物象、そしてそれらの抜け殻について書きました。