2017-02-11

運命に呼ばれる


先日少し書いた心意六合拳は、中国河南省の回族に伝わる武術。で、「最強」としてそれに並び称される八極拳はというと、こちらもまた河北省滄州の回族が起源なんですね。これ、武術と縁のない人にはかなり新鮮に感じられる話のようです。

もともと滄州は武術の聖地として古くから有名で、早くは『漢書』に滄州人の武術三昧の記述が出てきますし、明・清時代には武挙(科挙の武官ヴァーション)の合格者を1937名輩出しています。ちなみに『水滸伝』の冒頭で林冲が島流しになるのもこの地。武侠小説ゆえ、とうぜんそのくらいのプロットでないと話が始まらない、というわけ。

ところで学生の頃、通っていた教室のつてで八極拳発祥の地である滄州の孟村にゆくチャンスがあったのですが、にもかかわらず研修費をつくれずに断念したことがありました。まさか両親に「八極拳の修行をしたいのでお金を下さい」とは言えないし。で、その話を先日ある人にしたら「あなたの態度は典型的な『運命に呼ばれていない』ってやつだね。人が運命に呼ばれるときは、金の問題は言うにおよばず、法を犯すことすら恐れないで、すべてを乗り越えてそこへいっちゃうんだから」と言われて、たしかに自分の周囲を見回してもそれは本当にそうで、ああ、ほんとうにそうだな、そうなんだよなって思うことしきり。

ぶつかつて蝶が生まれる土俵かな  小倉喜郎