2017-06-01

アポロの中の〈マドレーヌ性〉



もう20年くらい前、いまの同居人とピアノを買いに、京都寺町二条の楽器店を訪れたことがありました。家の外でも弾きたいときに練習ができるよう、大学のサークルBOXに私物として一台置こうと二人で相談したんですね。

そこでいろいろと試弾してみて、ダントツで好みだったのが、ザウターのアップライトピアノ。音色に慎しみと知的な艶とがあって、さらに木材の質感もたまらない。デンマーク家具みたいで。同居人もザウターLOVEだったようで、これ欲しいね、車と比べたら呆れるくらい安いしね、うんぬん、とお互い感動しあって、最終的に中古のアポロを購入することに(この世には予算というものがある)。

で、ここから本題なんですが、アポロはすごく良かったです。音が開放的で伸びがあり、こちら側がそっと御する感じのピアノ。シューマンの『子供の情景』みたいな曲を神妙に弾くと、本当に小さな頃に戻ったような、甘美なマドレーヌ気分に浸れます。

さっきネットを眺めていたら、いま日本に国産ピアノメーカーが3社しかない(ヤマハ、カワイ、そしてアポロの東洋ピアノ)という衝撃的な話を知ってしまったため、なんとなく書いてみました。おしまい。