2018-07-07

アントノフとゆかいな仲間たち





滑走路へ向かうAntonovに手を振るサボテン夫婦。右のピンクの飛行機はハンガリーのWizz Air。左のオレンジの飛行機はeasyJet。

今週号の週刊俳句に、第35回現代俳句新人賞受賞作に対する評「器に手を当てる 宮本佳世乃『ぽつねんと』における〈風景〉の構図」を寄稿しました。これ、もともとよその雑誌に書いた原稿なのですけれど、少々わかりにくかったので、今回の転載にあたり加筆・整理してあります。

内容については、俗に「オルガン調」と称される句風の特色の一つを杜甫の倒装法ならびに芭蕉の俳句と比較すること、そして宮本佳世乃が切れ字以外のどのような方法を使って一句の中に構造を生み出しているのか、といった2点に絞って書きました。

あ、あと「純粋経験」という言い回しが2度出てくるのですが、指している様態は別のものです。ひとつは直観が超越論的統覚に至る手前の〈感覚の束のもつれあう世界〉のことで、もうひとつは〈数学の世界〉のことになります。

2018-07-06

それを愛する理由





きのう、ある方から『カモメの日の読書』についての素敵な感想をいただいたことがきっかけとなって、俳句における〈構造と質感〉との問題について考えていました。

というのは『カモメの日の読書』のある章で「俳句の質感を楽しみたい」という話をしているのですけれど、実のところわたし、性格的には質感派ではなく、むしろ相当構造派なんですよね。

で、それがために、わたしにとって構造を楽しむという行為は、自分を愛することと容易に繋がってしまうんです。

けれど自己愛って本当つまらないんですよ。息苦しいし。どうせ愛するのなら、自分ではない、もっともっと素晴らしいものを愛したい。

そんなわけで、わたしは質感を愛し、それを楽しむのでした。

2018-07-01

漢詩における連句





日曜日。窓の下を電車が走っているのが嬉しくて、何度もベランダから覗いてしまいます。死んでいるみたいに音もなく滑る電車は、柔らかな鈴を一度鳴らして、いま駅に停車したところ。

今週の週刊俳句に「俳人インタビュー*小津夜景さんへの10の質問」が掲載が掲載されています。

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漢詩における聯句(連句)詩の起源は古く、漢の武帝が柏梁台に宴遊した際、諸臣に命じて各七言一句ずつ、韻を踏んで連作させた柏梁詩が始まりらしいです。26人による聯句ですが、こういうのって宴会の余興として最高に盛り上がるだろうな、と思います。また次に引用する何遜(467年?-518年?)范雲(451年-503年)劉孝綽(481年-539年)による「擬古三首聯句」は五言四句ずつの3人聯句。

家本青山下、好上青山上。青山不可上、一上一惆帳。
匣中一明鏡、好鑒明鏡光。明鏡不可鑒、一鑒一情傷。
少知雅琴曲、好聽雅琴聲。雅琴不可聽、一聽一沾纓。

青木正児『琴棊書画』によると「古歌の一章に擬する条件のもとに各人別々の趣向を立てたので、意味の連絡はないが、気脈は貫通している」タイプの連句詩。とても素敵な字面です。誰か訳してくれないかしら。

2018-06-30

姉にあねもね





ここ数年来、ずっと工事中だった家の前がとうとうきれいになって、今日から芝生の上を電車が走りはじめました。さっきまで市長の挨拶とブラスバンドの演奏が続いていたところ。近所の人たちはみんな開通セレモニーを見に行っているみたい。隣に住んでいる男の子もお父さんと一緒に電車を見に行っていて、周囲がとても騒がしい。

すごいなあと思うのは今日から9月2日までの2ヶ月間、この電車の運賃が無料なこと。観光シーズンまっさかりにもかかわらず。しかもこれ、空港に乗り入れている電車なんですよ。こういう太っ腹なところは南仏クオリティです(7月20日追記。空港まではまだ到達していませんでした。誤情報、許してください…)。

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昨日の続き。小池純代による別の遊戯に攝津幸彦〈階段を濡らして晝が來てゐたり〉の17音を各首の頭に据えた17首連作「碌碌集」があります。以下に4首を引きます。

階段を濡らしてのちに來たるらし在不在(ありてあらざる)白日白(はくじつのしろ)  小池純代

いましがた姉にあねもねいま胸にわすれもしねえむねえもしゅねえ  (あねもねに「風の娘」、むねえもしゅねえに「記憶の女神」とルビ)

がらんどうなれば鳴るほかなきものを夏鴉來て鳴きてゐるなり

來て仰(おほ)す花眼(くわがん)の花がかく仰す 見紛ふてこそ浮かぶ句もあれ

五感が涼しくなるような作品。そして、もしも〈静かな談林〉を目指した攝津幸彦がこの短歌を見たらとても喜ぶだろうなと思うのでした。

2018-06-29

李賀の聯句とその翻案



さきほど週刊「川柳時評」のここを読んでいたらこんな一節がありました。

そういえば、「連句」という言葉は漢詩でも使われている。
鈴木漠『連句茶話』(編集工房ノア)によれば、対話形式の漢詩に「聯句(連句)」があるという。漢の武帝の時代に始まる「柏梁体」である。また、李賀にも柏梁体の漢詩が二編残されている。これは一人で詠む独吟だが、「悩公」はプレイボーイ・宋玉と遊女の対話、「昌谷詩」は李賀自身と侍童との対話である。

これで思い出したのが、発売ほやほやの拙著『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』に何度も登場した小池純代のこと。というのも、実は小池さんには「悩公」の翻案があるんですよ。

宋玉と遊女のかけあいを李賀が一人二役で演じたこの詩は>こんなにも長いのですけれど、せっかくなので小池さんの訳で好きな流れを3箇所ばかり紹介してみます。

曉奩妝秀靨  あかときの気配も化粧も濃くなつて
夜帳減香筒  夜どほし焚いた香りが残る
鈿鏡飛孤鵲  かささぎが手鏡の背をかすめてく
江図画水葓  河にもまるるわれは水草



月分蛾黛破  月の弧を分けてもらつた蛾眉なのよ
花合靨朱融  花と融けあふまで頬あかく
髪重疑盤霧  どこまでもさまよふための霧と髪
腰軽乍倚風  まよはずきみに添ふ風になる



莫鎖茱萸匣  あの文の謎を解いたはわたしだけ
休開翡翠籠  解いてはならぬかはせみの籠
弄珠驚漢燕  つばくらめさへも驚くあそびかた
焼蜜引胡蜂  焦がした蜜のにほひ 焦がるる

うーん、まいった。これ、冒頭から読むとますます楽しいんです。まだ書きたいことはありますが、長くなりそうな予感がするので、続きはまた明日に。

2018-06-28

7/29 刊行記念イベントのご案内




【2018/07/29(日)】


小津夜景 × 蜂飼耳 × 外間隆史
「海外翻訳文学としての漢詩~古典との新しいつきあい方」
『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』『未明02』刊行記念

時間 _ 15:00~17:00(14:30開場)
場所 _ 本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1FAX

■ 前売1,500yen + 1 drink order
■ 当日店頭2,000yen + 1 drink order

チケットの購入はこちらから
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2018-06-25

旬の果実





いつもこのブログを見ている方はご存知のことですが、ここに公開している漢詩の訳はヒマのある折に少しずつ整えています。きのうの詩も先ほど推敲を終えました。新刊『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』を発売したことで新しい訪問者が増えたようなので、改めてお知らせする次第です。

どうして完成してから公開しないのかと言いますと、いったん公開しないと集中力が出ないから。とりかえしのつかない状況に追い込まれないとダメみたい。

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ここのところ旬のキウイ。近郊産のものを食べているのですが、或る樹はいつも双子の実をつけるんです。ひとつ食べるとふたつ食べたみたいで、まこと宜しき気分。

今が旬の果実といえば『カモメの日の読書』で訳した蘇軾の「ライチを食う」に、ここではライチを日に300個食べられる、うんぬんといったくだりがあります。これ、真似したら死んじゃうんですね、知ってました? わたしはきのう知りました。日にせいぜい5個、どんなに多くても10個。そうでないとライチ病になるらしい。気をつけないと。

2018-06-23

しおたまこ『雨がふってもハレルーヤ!展』




会期が残り一週間を切ってしまいましたが、イラストレーターのしおたまこさんが新潟市のシロネプレッソで個展を開催中です。まこさん曰く、

梅雨の日々でもわくわくするような気分のアガる服を着たい! そんな気持ちで、イラストをブラウスや、ワンピースにペイントしました。イラストがそのまま飛び出したようなアクセサリーも出品してます。夏晴れの日に向かって、元気になる素を探しに来ていただけたらと思っています。