2018-06-29

李賀の聯句とその翻案



さきほど週刊「川柳時評」のここを読んでいたらこんな一節がありました。

そういえば、「連句」という言葉は漢詩でも使われている。
鈴木漠『連句茶話』(編集工房ノア)によれば、対話形式の漢詩に「聯句(連句)」があるという。漢の武帝の時代に始まる「柏梁体」である。また、李賀にも柏梁体の漢詩が二編残されている。これは一人で詠む独吟だが、「悩公」はプレイボーイ・宋玉と遊女の対話、「昌谷詩」は李賀自身と侍童との対話である。

これで思い出したのが、発売ほやほやの拙著『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』に何度も登場した小池純代のこと。というのも、実は小池さんには「悩公」の翻案があるんですよ。

宋玉と遊女のかけあいを李賀が一人二役で演じたこの詩は>こんなにも長いのですけれど、せっかくなので小池さんの訳で好きな流れを3箇所ばかり紹介してみます。

曉奩妝秀靨  あかときの気配も化粧も濃くなつて
夜帳減香筒  夜どほし焚いた香りが残る
鈿鏡飛孤鵲  かささぎが手鏡の背をかすめてく
江図画水葓  河にもまるるわれは水草



月分蛾黛破  月の弧を分けてもらつた蛾眉なのよ
花合靨朱融  花と融けあふまで頬あかく
髪重疑盤霧  どこまでもさまよふための霧と髪
腰軽乍倚風  まよはずきみに添ふ風になる



莫鎖茱萸匣  あの文の謎を解いたはわたしだけ
休開翡翠籠  解いてはならぬかはせみの籠
弄珠驚漢燕  つばくらめさへも驚くあそびかた
焼蜜引胡蜂  焦がした蜜のにほひ 焦がるる

うーん、まいった。これ、冒頭から読むとますます楽しいんです。まだ書きたいことはありますが、長くなりそうな予感がするので、続きはまた明日に。