ジャック・ルーボーの詩は時に奥ゆかしく、また時に愛くるしい。『誘拐されたオルタンス』に登場する詩は素っ頓狂な可愛さ。日本語版では高橋啓氏が原詩を添えて訳しているので、余計におもしろかった。
こんな調子でどんどん続く(以下、翻訳部分のみ)。
とても豊かで、しかもすっきり。おまけに言葉がときめいている。翻訳もすごくいい。
とても豊かでしかもすっきりといえば、ルーボーによる詩節・連の分類ページもそんな感じ。ちゃんと読めもしない設計図を、にもかかわらずじっと眺めてしまう時みたいにわくわくする。
La Linzer Torte
Dans la Mer Morte
Prend uneu teinteu caramelle
Mais en Alsace
C'set la potasse
Qui lui donne la couleur miel
リンツのケーキ(リンツァー・トルテ)
死海では
キャラメルっぽく染まるけど
アルザスではカリ鉱石のせいで
蜂蜜色になるんだよ
(曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、K331、第一楽章。歌詞:著者)
こんな調子でどんどん続く(以下、翻訳部分のみ)。
プラムのタルトは
パンプローナでは
雌猫しょんべんに染まるけど
マインツでは
陶器のせいで
くすんだ色になるんだよ
ミルフイユは
アルジャントゥイユの近くでは
なんともいえない具合に染まるけど
モンソー=レ=ミーヌでは
小麦粉のせいで
砂色になるんだよ
シュークリームは
モラヴィア・ボヘミア地方では
社会主義に染まるけど
ウクライナでは
磁器のせいで
頁岩(けつがん)色になるんだよ
梨のタルトは
遊牧民のテント村では
ヤギの糞に染まるけど
ブリスベンでは
プロパンのせいで
レンガ色になるんだよ
サツマイモのタルト
カルパティア山脈では
血みどろに染まるけど
カブルグでは
恋のせいで
卵白色になるんだよ
とても豊かで、しかもすっきり。おまけに言葉がときめいている。翻訳もすごくいい。
とても豊かでしかもすっきりといえば、ルーボーによる詩節・連の分類ページもそんな感じ。ちゃんと読めもしない設計図を、にもかかわらずじっと眺めてしまう時みたいにわくわくする。