2020-01-10

言の葉、さわさわゆれる





俳句における言葉とのつきあい方にはいろいろありますが、わたしは言葉を手段として何か(内面とか風景とか)を表現するのではなく、言葉そのものを目的として取り扱いたい系です。

と、こう書くと、前衛的な言語遊戯を思い描く人が多いと思うのですがそれとは違うんですよ。前衛って言葉を自己意識に従属させているじゃないですか。そうではなく、生きていて、ふいに風や空気と遭遇する瞬間のように、意味と無意味のはざまをさわさわとゆれうごく言の葉のうごめきに驚きたいのです。つまり、言葉それ自体のふるまいを可視化したら楽しいだろうなってこと。まあ、そんな句は、なかなか生まれないのですけれど。

あかさたなはまやらわをん梅ひらく  西原天気

はじめの〈あ〉からおわりの〈ん〉まで50音表を水平移動するかと思いきや、ふいに〈を〉へ沈んでみせるといった掲句の調子は、まるでモビールの水平揺動&空中浮遊を形にしたかのよう。動く言葉、宙に浮かぶ文字  とても美術作品っぽいなと思います。

ちなみにこのような浮遊感覚は〈いろはにほへとちりぬるを〉では生じません。〈あかさたなはまやらわ〉は母音がA音オンリーであっけらかんとしているし、いろは歌と違って意味から解放されているし、地を這いくねるような重力や線分性からも縁遠い。〈をん〉の響きもA音とのよき掛け合いになっています。

なんだか、言葉がくすくす笑っているみたいです。

2020-01-08

マカロンとマンボウ





2日の日記にマカロンのことを書いたのだけれど、その人がエクサンプロヴァンスに旅行したとのことで、お土産にご当地マカロンをもらう。なんとも折のよろしきこと。

関悦史一〇〇句選とその解説「セキエツを味わうための11の皿」を寄稿した俳句雑誌『翻車魚』vol.3が自宅に届く。いま手元に数部あるので、読んでみたいという方がいらっしゃいましたら差し上げます。連絡先はこちらです。

2020-01-07

鏡の中の鏡





あそこに美味しそうな焼き鳥屋さんがあるよと言われつづけ、いつか試そうとは思っていたのだけれど、そのいつかが突然やってきた。クスクス、マッシュポテト、トマト、葉っぱ、キウイを一緒に盛って夕ごはんにする。

小池純代さんの笹鳴亭(web版千夜千首)よりクロード・ロワ『バルテュス』の翻案。

バルテュスがバルテュスを見る背後から
バルテュスを見る
死後からのやうに  
小池純代

鏡の中の鏡。妖しさと、ユーモアと、ほのかな酩酊が心地よい。この歌が気に入った方はこちらもどうぞ。

2020-01-05

灯籠まつり



年賀メールをいただいているのですが、どこかに不調があるらしく返信ができません。今日の日記は、返事を差し上げられない方に向けて書きます。


あけましておめでとうございます。きのうはお正月らしいことをしようと、旧暦の元宵節の夜まで催される灯籠まつりに出かけました。会場は近所の植物園。550あまりの灯籠が展示されていました。写真の龍は長さが50メートルあり、池の上に浮いています。中央の桃みたいなものは真珠だそうです。


わたしは壮麗な作品より、小さなものが面白かったです。これは茂みの中にいたパンダ。


宇宙っぽいパンダ。


この大壺も灯籠。屋台の内側には龍のランプが吊るしてありました。本年もよろしくお願い申し上げます。

2020-01-03

『はがきハイク』第21号





業界最小最軽量俳誌『はがきハイク』第21号が届く。セーターを着た鳥のイラストがかわいい。興味があるよ、という方はこちらに連絡すれば送ってもらえるようです。

オクターヴごと飛びたつよ梟は  亞子

美しいようでいて人を食った句。どんなオクターヴなのか。テルミン系の音を想像してしまう。

おほかたの蒲団に涯(はて)のありにけり  天気

「おほかたの」がいいですね。ユーモアめかしつつ、涯のない、広大無辺な蒲団の可能性をしっかりと語る。そんな蒲団の中で宇宙の香りを満喫したい。

2020-01-02

2020年の読初





2020年の読初は岡崎乾二郎『抽象の力』。抽象芸術の発生をシュタイナー、フレーベル、モンテッソーリといった面々の考案した「教育遊具」とクロスさせて眺めている下りが面白かった。

年をまたいでしまいましたが、半月ほど前の『遊刊エディスト』に風韻講座特別篇「半冬氾夏の会・夏秋の渡り」の記事が出ています。会場は編集工学研究所の本楼。写真に写っていない壁にどっしりしたバーカウンターが設えられておりまして、なんて気分良くパーティーできる空間なのだろうと思った記憶が、ふといま蘇りました。

2020-01-01

ふわふわふうみ





往復書簡「LETTERS」更新しています。第16回は「ふわふわふうみ」。降誕祭前夜とトレーズ・デセール、数理的に分析されたハルモニア、くだものの音、古典のふわふわ、かすていらかすむ夕べ、素材に耳をすますこと、本質と実存とが一体になったつくる人々の世界、などなど。上はこちら、下はこちらからどうぞ。

ええと、以下は世間話。

つい先日、知り合いから「クリームを挟んだマカロンがニースで売られるようになったのは、ここ10年くらいのことだよ」と言われたんですよ。で、ちょっとびっくりしたんですよね。日本人はマカロンというと、ラデュレ考案の、2枚のマカロンにクリームを挟んだ「パリ風マカロン」をかならず思い浮かべるじゃないですか。でもこちらの人はメレンゲを混ぜた単なるアーモンドクッキーを想像するようで、たしかにその目線で眺めれば、いまでもこの町はクリームなしマカロンの方が主流かもしれないなって。アーモンドクッキーとマカロンはわたしの中ではまったく別のカテゴリーだったので小さな発見でした。

Bonne année