2018-07-27

和菓子っぽい資料。





7月29日(日)B&Bで催されるトークイベント用の資料を、数ページ分作成しました。

当日、時間の都合などでこの資料に言及できなくても、お越し下さった方へのしっかりしたお土産になるようにと思い、和菓子っぽい厚手の紙に印刷してみました。こちらを〈『カモメの日の読書』に添えるお茶請け的な読みもの〉(外間隆史談)として配布します。

日曜日の午後が良い天気になりますように。

* * *

【2018/07/29(日)】
小津夜景 × 蜂飼耳 × 外間隆史
「海外翻訳文学としての漢詩~古典との新しいつきあい方」
『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』『未明02』刊行記念

時間 _ 15:00~17:00(14:30開場)
場所 _ 本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1FAX

■ 前売1,500yen + 1 drink order
■ 当日店頭2,000yen + 1 drink order

チケットの購入はこちらから

2018-07-24

未明編集室と編集工学研究所





俳句業界に句友がいないまま2016年に刊行した『フラワーズ・カンフー』は、帰国時にご挨拶したことのある少数の方がツイート・ブログを書いてくださった程度で、ほとんど話題になりませんでした。その状況が一変したのは「俳句」2017年新年号での中原道夫・小澤實の両氏による推薦がきっかけで、新年号が出たとたん、献本先から「拝読しました!」というメールが舞い込むようになり、また田中裕明賞受賞後の数日間も有名らしい方たちから「素晴らしい句集でした!」とメールをいただき、一瞬、このまま俳壇に誘われてしまうのかと思ったりも(ありえないけど)。

一方こちらの属性を考えず連絡くださる方もいて、びっくりするほど早かったのが「未明編集室」ディレクターの外間隆史さんと「編集工学研究所」のイシス編集学校師範で歌人の小池純代さん。どちらもこの夏、鼎談をすることになり、なんだか不思議な気分です。

「未明編集室」が共催となった7月29日B&Bでのイベントは告知したばかりなので、8月4日にある「編集工学研究所」の方に少し触れますと、これ実は一年半越しの企画だったりします。講師としてお招きくださるとのメールを昨年春に頂き、それから数ヶ月後の日本帰国時に本決まりとなり、さらにその一年後が本番。イシス編集学校受講生のための講座ゆえ告知はしていませんが(終了後に感想を書くかも)、松岡正剛さんと小池純代さんと鼎談できるなんてとうきうきしています。

で、今日の本題ですが、先日「未明編集室」の外間隆史さんとイベントの打ち合わせをしたんです。その折、帆立の乗ったワイルドライスを食べながら、話の流れで彼の作品制作の方法を伺っているうちにふと、エディションやディレクションといった分野は人類学っぽい感性を必要とするのかも、と思ったんですよ。うまく説明できないのですけど、基本、独創的な分類を打ち立てる作業とでもいうか。またその点において、まるきりタイプの違う松岡正剛さんと外間さんとが繋がった気分になったりもして、ふわりと充実のひとときでした。

2018-07-22

まっすぐに愛を語る(7月29日トークイベントのお知らせ)





7月29日のB&Bイベント「海外翻訳文学としての漢詩~古典との新しいつきあい方」まであと1週間になりました。

実を言うと『カモメの日の読書』が実際に刊行されるまでは、漢詩にどのくらいの需要があるのか全く想像がついていなかったんです。それでトークの内容も「中国腐女子による白居易×元稹を扱ったBL事情」みたいなネタ的な話題を多くした方がいいのかなあ、なんて考えでおりました。

ところがいざ本が出ると「誰にも言ったことがないんですけど、実は私、めちゃめちゃ漢詩が好きなんです!」といった声が途切れることなく舞い込んでくる。書店の店主さん、見知らぬ読者の方、そしてなぜかうちの夫までそう言い出しているんですが、ともかくそれで「もしかして、超ストレートに漢詩そのものを語るべき?」と気づきまして、それぞれの詩人たちのこだわりや言葉とのかかわり、そして生きざまについて「わあ。この人、よく喋るなあ!」と呆れられるくらい語ることにしました(朗読も交える予定です)。

あと個人的には、やはり外間隆史さんと蜂飼耳さんのお話が楽しみです。特に論客・蜂飼耳さんからは詩論について存分に(小津についてゆける範囲でですが…)伺うつもりでいるので、漢詩にあまり興味がないよ、という方にも聴きどころのある会になるのではないかと思います。興味のある方はぜひお越しくださいませ。

【2018/07/29(日)】
小津夜景 × 蜂飼耳 × 外間隆史
「海外翻訳文学としての漢詩~古典との新しいつきあい方」
『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』『未明02』刊行記念

時間 _ 15:00~17:00(14:30開場)
場所 _ 本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1FAX

■ 前売1,500yen + 1 drink order
■ 当日店頭2,000yen + 1 drink order

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2018-07-14

港の食堂





港には船会社や船舶クラブの建物があって、全国どこに行ってもそっくりの外観をしている。建物の中に食堂があるのも同じ。料理はものすごく大雑把で、安くて、雰囲気は悪くない。


2018-07-13

海のオルガン



サッカーW杯が盛り上がっているせいで、クロアチアにある〈海のオルガン〉のことを思い出しました。


場所はアドリア海に面したクロアチアの古都ザダル。どうやって音を出しているのかの簡単な説明がこちらにあります。調べてみると、風と波を利用した創作楽器である〈海のオルガン〉はあちこちにあるようで、例えば下はイングランド・ブラックプールにあるハイ・タイド・オルガン。


これはサンフランシスコにある波のオルガン。動物のうなり声みたい。


ところで創作楽器を置かなくても、そこにあるものと波や風が和して、不思議な響きはいつも生まれていますよね。そういった音、とくに明け方のそれがとても好きです。

ひくく鳴る海のオルガン雲の峰  田中裕明

2018-07-08

Star-Crossed



行く先のちがふ言葉が重なりてポストの中でひと夜を過ごす  熊谷純

この世にはさまざまな手紙がある。そのひとつが〈宛先が正しいのに決して届かない手紙〉というもの。

あるひとに送った郵便が3週間経ってまだ届いていないらしい。そのひとは「これで2度目です」と言うのだけれど、いいえ、あなたにお送りしたのに届かなかった郵便は全部でざっと4便ですよ、と心の中で思った。

ただ個人的には、届かなさを楽しむために手紙を出す、というのも一興。この時代、次こそは届くだろうか、なんて物思いはなかなか味わえない。

そのひとは昨夜、届かない手紙と七夕とをかけてStar-Crossedという表現も教えてくれた。この世には素敵な言葉がたくさんありますね。

2018-07-07

アントノフとゆかいな仲間たち





滑走路へ向かうAntonovに手を振るサボテン夫婦。右のピンクの飛行機はハンガリーのWizz Air。左のオレンジの飛行機はeasyJet。

今週号の週刊俳句に、第35回現代俳句新人賞受賞作に対する評「器に手を当てる 宮本佳世乃『ぽつねんと』における〈風景〉の構図」を寄稿しました。これ、もともとよその雑誌に書いた原稿なのですけれど、少々わかりにくかったので、今回の転載にあたり加筆・整理してあります。

内容については、俗に「オルガン調」と称される句風の特色の一つを杜甫の倒装法ならびに芭蕉の俳句と比較すること、そして宮本佳世乃が切れ字以外のどのような方法を使って一句の中に構造を生み出しているのか、といった2点に絞って書きました。

あ、あと「純粋経験」という言い回しが2度出てくるのですが、指している様態は別のものです。ひとつは直観が超越論的統覚に至る手前の〈感覚の束のもつれあう世界〉のことで、もうひとつは〈数学の世界〉のことになります。

2018-07-06

それを愛する理由





きのう、ある方から『カモメの日の読書』についての素敵な感想をいただいたことがきっかけとなって、俳句における〈構造と質感〉との問題について考えていました。

というのは『カモメの日の読書』のある章で「俳句の質感を楽しみたい」という話をしているのですけれど、実のところわたし、性格的には質感派ではなく、むしろ相当構造派なんですよね。

で、それがために、わたしにとって構造を楽しむという行為は、自分を愛することと容易に繋がってしまうんです。

けれど自己愛って本当つまらないんですよ。息苦しいし。どうせ愛するのなら、自分ではない、もっともっと素晴らしいものを愛したい。

そんなわけで、わたしは質感を愛し、それを楽しむのでした。

2018-07-01

漢詩における連句





日曜日。窓の下を電車が走っているのが嬉しくて、何度もベランダから覗いてしまいます。死んでいるみたいに音もなく滑る電車は、柔らかな鈴を一度鳴らして、いま駅に停車したところ。

今週の週刊俳句に「俳人インタビュー*小津夜景さんへの10の質問」が掲載が掲載されています。

* * *

漢詩における聯句(連句)詩の起源は古く、漢の武帝が柏梁台に宴遊した際、諸臣に命じて各七言一句ずつ、韻を踏んで連作させた柏梁詩が始まりらしいです。26人による聯句ですが、こういうのって宴会の余興として最高に盛り上がるだろうな、と思います。また次に引用する何遜(467年?-518年?)范雲(451年-503年)劉孝綽(481年-539年)による「擬古三首聯句」は五言四句ずつの3人聯句。

家本青山下、好上青山上。青山不可上、一上一惆帳。
匣中一明鏡、好鑒明鏡光。明鏡不可鑒、一鑒一情傷。
少知雅琴曲、好聽雅琴聲。雅琴不可聽、一聽一沾纓。

青木正児『琴棊書画』によると「古歌の一章に擬する条件のもとに各人別々の趣向を立てたので、意味の連絡はないが、気脈は貫通している」タイプの連句詩。とても素敵な字面です。誰か訳してくれないかしら。