2022-03-01

作業終了。





2月26日の「スケザネ図書館」1周年記念生放送は30分の出演予定が、トラブルを引き起こしてしまい15分しか出演できなかった。ご視聴の方々にとても申し訳ないことをした。終了後、壁を向いてひっそりと落ち込んでいたらスケザネさんから連絡があり、まだ詳しくはいえないけれど、また近々いっしょになにかしそうな雰囲気に。

と書きながらスケザネさんのツイートを見ると、クリッパーの箱の画像が。だいたいわたしはここのお茶を飲むときは、ティーバッグの袋をきれいに破って、飲みながら、ええと、こう、こんなふうに指でつまんで、じっと空いた袋を眺めるんですね。で、このじっと袋を眺めている時間っていうのが言葉のない、しんとしたつかのまで、毎回すごく幸せなんです。おそらく小ささがいいのでしょう。

それから今朝は『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる対話』の特典付録を書いた。なにも考えず1行目から書きすすめ、これなら30分くらいで仕上がるかと思いきや、あれやこれや細かいところを直しているうちに2時間かかった。家人に見せると「殺人事件が起こらないところが弱いね」と批評されるが、今日が締め切りだというのに今からそんな要素をもりこむのは不可能である。次回の課題としたい。

午後には須藤さんの原稿も上がり(これがとても美しい文章!)、表紙写真の候補も出そろって、あとは本当に刊行を待つのみ。3月23日刊行なので、手元に届くのは4月中旬といったところか。

ちなみに特典付録付きの『なしのたわむれ』は素粒社のオンラインショップでも購入できます。日本国内は送料無料です。お支払いはクレジットカード決済、コンビニ決済、翌月後払い、PayPal、銀行振込、キャリア決済、楽天ペイ対応とのこと。さてクリッパーでも飲むか。

2022-02-21

【新刊】『なしのたわむれ』をめぐるあれこれ





ヴィオラ・ダ・カンバ奏者須藤岳史さんとの共著『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』(素粒社)が3月23日に発売されます。

大きさは四六判。装丁は平凡社STANDARD BOOKSでおなじみの重実生哉さん。おまけつきの予約情報など、また追ってお知らせします。

『なしのたわむれ』は東海教育研究所のウェブマガジン「かもめの本棚」に連載した往復書簡が元になっています。「手紙か、興味ないな」と思ったあなた。安心してください。手紙といってもそれぞれが独立したエッセイとして読める体裁にしてありますゆえ。また「連載中に読んだよ」というあなた。この本の加筆修正は半端じゃありませんよ。ばんばん大鉈振るってます。小津のパートに至っては大鉈を振り回しすぎて、100%新作エッセイになってしまったものもひとつやふたつじゃありません。そんなわけでご覧いただく機会がありましたら幸いです。

ところで、今朝ひさしぶりに会った人に『なしのたわむれ』の装丁を見せたら「タイトルはなんていうの?」ときかれたんです。それで「無のゲームだよ」と教えたんですが、そこにまた別の人がやってきて同じ質問をされたので、今度は「梨のジュースだよ」と答えました。この装丁だったら「梨のジュース」でも間違いじゃないな、と思って。
 
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目次(◆は小津筆、◇は須藤筆)
はじめに◇



第1信 ◆ きらめくらくがき
第2信 ◇ 耳は意味を探してしまう
第3信 ◆ なしのたわむれ
第4信 ◇ 辺境への誘惑
第5信 ◆ ことばはこばと
第6信 ◇ 音のこどもたち
第7信 ◆ ありやあらずと
第8信 ◇ 詩と道と
第9信 ◆ 存在の青い灰
第10信 ◇ 片隅と世界と
第11信 ◆ ゆめにめざめる
第12信 ◇ この地上で



第13信 ◇ 日曜日の午後の軽い手紙
第14信 ◆ 文(ふみ)と不死
第15信 ◇ うちのそと
第16信 ◆ ふわふわふうみ
第17信 ◇ 未来を読むこと
第18信 ◆ ものがたりのはじまり
第19信 ◇ 隠された接続詞
第20信 ◆ みえないたくらみ
第21信 ◇ 間の呼吸
第22信 ◆ わたしのあだしの
第23信 ◇ 限りない広がりと空白
第24信 ◆ ふりだしにもどる

おわりに◆
おもな引用・参考文献


『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』
著者:小津夜景・須藤岳史
装幀:重実生哉
定価:1,800円+税 本文ページ数:232 寸法:四六判
発行所:素粒社 2022年3月23日刊行


2022-02-13

未来が楽しみな土曜日





土曜日、病院に行って驚いた。手術までしたのに血液検査の結果が少しも改善されていないのである。なんか変だなあと思いながら暮らしていたけどやっぱり変だったのだ。医者は、そんないきなりは良くならないよ、ちょっとずつだよと言う。なるほど。楽しみに待っていよう。

「週刊俳句」第773号に表紙と小文を寄稿しています。それから2月26日にスケザネ図書館の1周年記念放送に生出演します。変なことを口走るかもしれませんが、ご覧いただけますと嬉しいです。

2022-02-08

近況日記



とうとう今朝、新刊の直しが終わった。ブログ書きたいなあと思っていたのが、やっと書けてうれしい。


ポリネシアの友達が魚屋さんの写真を送ってくれる。奥にいる魚の顔がいい。アカマンボウだそうだ。


ウィキをみると、アカマンボウは深海に棲む温血魚と書いてある。しかも魚類で唯一らしい。本当なのかしら。血があったかいから、深海でもすいすい泳ぐらしい。さらに驚いたのはアカマンボウがマンボウじゃないってこと。こんなぷっくりしてますのになんでちがいますのん。

昨日、楳図かずおの展覧会が開催されているとの報が届く。まじか。わたしはこの世界に楳図かずおより好きな人がいないってくらい彼が好きなのだ。なんど読み返しても、画伯の霊感がわたしの脳を貫通する。いいな、いいな、観に行きたいな、と思いながら眠りについたが、夢の中で楳図かずおに逢えるという奇跡も起こらず、あろうことかわたしは荒井注と昭和30年代のはとバスに乗り、雨の東京を見物しながら、井原西鶴の話なぞをしていたのだった。

切腹はたてからひいて横霞  井原西鶴

2022-01-24

瞬間には味がない





日曜だというのに、昨日は朝から出かけた。雪見大福を手に入れに。

この日の雪見大福は白のバニラアイス、黒胡麻アイス、マンゴーシャーベットがそれぞれ2個ずつ。写真は黒胡麻とマンゴー。お餅の部分はもう少し薄くて伸びるとうれしい。願わくば改良されんことを。

雪見大福が一瞬で消える。

机に向かい、この春刊行の本のゲラをこりこり直す。直していると、意味のつじつまで躓く。そのとき、次のようなことを考えた。

人間にとっての時間とは記憶と期待のことだ。それらを欠けば時間は人間にとって抽象的なものにすぎなくなるだろう。

〈過去〉はもどらないし〈未来〉はまだこない。わたしは存在しない〈過去〉の記憶と〈未来〉への期待とでもって〈いまここ〉をサンドウィッチにして味わっている。ところで、この〈いまここ〉とは何かというと、時間をすっぱりと裁ったその断面に違いなく、つまり厚みがない。とすると人は、〈過去〉と〈未来〉というここに存在しないパンでもって〈いまここ〉という厚みのないハムを挟んでいるということになる。だが厚みのないハムに味などあるのだろうか。あるのだろうか。あるのだろうか。ひょっとしてないんじゃないか。思い返せば、瞬間には味がない。過ぎ去ったその残り香に、わたしは貧しくも酔うにすぎないのだ。

2022-01-19

ミモザと空耳放浪記





果物屋さんの店先に、ミモザが売り出されていた。春だ。

いつかたこぶねになる日』の3刷が決定しました。この本ってクラファンと連動していたこともあって初刷がかなり多かったんですよ。だから2刷さえ無理なんじゃないかと思っていたのにまさかの在庫切れだそうで。感涙。3刷には記念特典として、漢詩にまつわるエッセイの小冊子がつくらしいですよ…って、いまから私が書くんですけど。やらねば。2月10日出来予定。

現在発売中の『小説すばる』2月号から連載が始まりました。タイトルは阿佐田哲也にあやかって「空耳放浪記」といいます。なにゆえあやかっとるんじゃ、あやかる必要あるんかいなと思われるかもしれませんが、あるんですねこれが。といっても、単に高校生のころからのファンだって、それだけですけど。でもね、わたしは思うんです、この世界は「ただそれだけのこと」で成り立っているときが、いちばん愉しいよねって。

と、ここまで書いたところで家人から連絡が来た。上の果物屋さんの隣の筋で発砲事件があり、人が死んだそうだ。犯人は逃亡中。今日はこれから予後の検査があったのだけれど、外に出られなくなってしまった。


2022-01-10

10キロマラソンがあった日曜日の午後



数日前からリハビリのために歩きはじめ、昨日は数ヶ月ぶりに海に出ました。


これが病院。海の真正面にあります。


海。大きくて、なんにもなくて、いいなあ。


体調いかがですかというメールをいっぱいいただいているのですが、そんなわけで元気でやっています。ブログの更新がまめにできるようになるのはもう少し先だと思いますが、たまにインスタも更新しているので、そちらもご覧いただければ。

2022-01-01

謹賀新年



今年の元日は病院で迎えた。写真は談話室の窓から眺めた海。病室は個室なので居心地がいい。元気もありあまっていて、年末から年始にかけて本を2、3冊読んだ。朝ごはんを食べたあと、うとうとして、初夢もすでに見た。尻尾ふさふさの狐が丸まって高速回転しながら空中を飛んで来て、私の前にある白いお皿に着陸した瞬間、きゅっと小さなおまんじゅうに化けるって夢。あんドーナツくらいのおまんじゅうだった。