2017-01-28

旅の途中で





旅の途中、アンリ・カルティエ=ブレッソン財団へ行ってみたら『逃げ去るイマージュ(Image à la Sauvette)』のオリジナル写真展をやっていた。友達のマチスにつくってもらった表紙もあった。


昔、西原天気『けむり』のレビューで、彼の句の流体的特色を説明するのにカルティエ=ブレッソンに話が及んだことがあって、その際この写真家ついて次のように書いた。

『決定的瞬間』と題された英語版写真集が世界に与えた衝撃によって、その原題『逃げ去るイマージュ』が人々に一時忘れられたことはよく知られる事実だが、彼の作品の重要な特質が、瞬間=永遠性の凝固よりもむしろ「凝固以前のひろがり」にあることは、しばしば指摘される通りである。加えて写真集の表紙が彼自身の作品ではなく「永遠に反復される暫定性」をこれまた軽やかに具現したマチスの切り絵だったことも、彼とイマージュとの関係を端的に示しているのではないかと思われる。カルティエ=ブレッソンもまた、本人の意図をはるかに越えたところで「世界の一挙的再現性」という神話的言説(これを単純に「ポエム的発想」と言っても構わないが)にとりこまれた一人だった。(流体領域 西原天気『けむり』を読む

「世界の一挙的再現性」とは、つまるところアドレッセンスな夢にすぎない。それは、モノをつくる人間にとって〈醒めつつ眺める夢〉であってほしい、と思う。

これもあのデュシャンの泉かじかめり  西原天気