蚊柱を連れみづいろの都まで 西原天気
「はがきハイク」第18号より。「蚊柱を連れ」の部分に魔術的な魅力があり、ふわりと宙に浮かぶようにして都に赴く人が目に見えるようです。この句の夢遊(浮遊)力については、蚊の乱舞が煙に似ていることも関係しているのでしょう。わたしにとって、とてもしっくりくる情景。
入れ墨のごとき地図ありしんしんと鈴のふるへる水の都に
小津夜景
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穴ひとつ空に残して雲雀の死 笠井亞子
大伴家持〈うらうらに照れる春日に雲雀あがりこころ悲しも独りし思へば〉の時代から、雲雀は和歌において自由主義的な昂揚感のある素材。いっぽう俳諧においてはそうではなかった(当ジャンルの「昂揚」は往々にして渋好み=反青春的矜持として顕れる)。この句の「死」にはフランス象徴主義的な印象を受けました。なお「はがきハイク」は亞子さんによる素敵な鳥のイラストが見られるのもうれしい。
雲雀の血すこしにじみしわがシャツに時経てもなおさみしき凱歌
寺山修司