2022-06-24

あんなこんなで月日が過ぎる





堀口大學がジュリアン・ヴォカンスの俳句をどんなふうに訳していたを確かめたくて『月下の一群』を開く。で、読みながらふと、この人は父親である堀口九萬一の漢詩集『長城詩抄』も翻訳していたなと思う。たぶん『堀口大學全集』でしか読めないんだけど。どこかに落ちていないかしらと探したら、あった。以下はRiche Amateurからの寸借です。

花気満天地 花の香りで外気は一ぱい
好風入晝樓 絵のような室内はそよ風一ぱい
椰葉遮白日 椰子の広葉が太陽をさえぎり
蕉陰引涼稠 芭蕉の影が涼を呼ぶ
山翠思著履 山のみどりに靴をはく気になり
水清時浮舟 清流時には舟も浮べる
退食招酒友 食事半ばに飲み友だちを招き入れ
休沐會時儔 休み日には詩友を集め
高談動乗燭 遠慮の要らない高ばなし
放歌忘百憂 放歌憂を忘れ
何管歳月逝 あんなこんなで月日が過ぎる
個中楽悠々 暢気なものです

翻訳の味わいもさることながら、九萬一の漢詩、素敵すぎるってば。しかもすごく良い。これは全集買わなきゃならないかしら。いやでも『長城詩抄』だけ読めればいいんだよなあ。どうしよう。来月日本に行くので悩んでしまう。