2019-10-01

夜の残り香





長き夜のmemento moriのmの襞  夜景

あの、夜景さんって名前に「夜」が入ってるのに、なんか僕ずっと「昼」の人だと勘違いしてましたごめんなさい、と、先日いきなり知り合いに謝られた。

いままで何人かこれと同じことを云う人がいた。あらためて読んでみると、名前のとおり夜の人ですよね、と。

また少し違う角度の話では、「夜景さんがクラゲを好きなのは、クラゲが〈暗げ〉だからでしょう? あとクラゲを絶対に〈海月〉と綴らないのは、クラゲを照り輝かせたくないからですよね?」と福田若之さんに言われたこともある。

なるほど。そうかもしれない。

ところで、夜の表象が昼とは別種の世界をひらくとき、そこにひらかれたありさまを見て「夜とはこういうものだ」と語ることはできない。夜とは変容の触媒であり、どんな景色でも現前させる。むろん光さえも。

夜の景色にたたずんでいるときも、夜そのものは掴まえられず、煙のように指先から逃げてゆく。かろうじて人にできるのは、その残り香を嗅ぐことだけだ。

いさよいの紙をながるるのは雲か  夜景