2018-04-04

民謡・涙のアロハオエ




戦前の日布時事文芸欄を眺めていて「へえ」と思うのが、俳句・短歌・川柳・都々逸・詩・小説・評論以外に、民謡の歌詞が掲載されること。本当に古い感じの歌詞、新民謡運動っぽい歌詞、「東京行進曲」風のモダンな歌詞などかなり幅がありまして、ここでは都々逸のリズムで書かれた民謡の歌詞を2篇引いてみます。

「砂山」  柳泉

取消しましよとも
言はないうちに
朝の白さに目がさめた

今もほのかに
残つてゐます
やさしい夢の足跡が

そつと抱いても
さらりと逃げて
マナの砂山しのび泣き

わたしが子供時代を過ごした場所も、海からの移流霧がしたたかな町だったので「朝の白さに目がさめた」感じというのはよくわかります。いつもそうなのに、なぜか朝が来るたび胸を衝かれるの。

「島の港」  山川草子

島の朝(あした)はそよ風小風
可愛かをりの花がさく
今朝の入船(いりふね)明日の出船(でふね)
レイに埋れた港ぐち

島の港のしぐるゝころは
マノア夜空に虹が浮く
今宵出船のテープに濡れて
やるせ涙のアロハオエ

そういえば「アロハオエ」ってどんな意味なのだろう?と思って調べてみましたら、英訳で「さらば汝よ Farewell to thee」、仏訳で「さようならあなた Adieu à toi」となっていました。なるほど、そうだったんですね…。知らずに聴いていました。サビの部分だけ訳してみます。

さようならあなた さようならあなた
夏の別荘に籠る美しいひと
出発の前に もういちどやさしい抱擁を
また会えるその時まで