2018-08-24

紙の楽器、紙の偶景






≫≫ 1.蝶の詞華集(
≫≫ 2.ささやかな休息(


この夏、佐藤りえさんからいただいた、小さな紙のアコーディオン。ぺパニカといって、ふつうは自分で組み立てて遊ぶキットらしいのですけど、ご本人が試しに組み立ててみたところ、小津につくれるか不安になったそうで完成品をくださいました。よくご理解いただき、まことかたじけないです。Gという白い文字が見えるでしょうか? これ「ソ」の音が鳴るんですよ。

そんなりえさんの連載「造本の旅人」があいかわらず手が込んでいて、第8回はロラン・バルト『偶景(Incidents)』を〈ほぼ全ページ本文紙が違う本〉として仕立てています。こちらには制作ノートも。


記憶の中の風景へと、ゆっくりとしずかに焦点を合わせてゆくような、少しはりつめた佇まいは、ちょっとご本人の短歌にも似ています。この人の作品って、しばしば記憶の表面に紗がかかっているんですよね  濡れたガラスに遮られたり、雨の音に紛れたり、といった気配の。あるいはその水の気配は、そのまま涙なのかもしれません。