2022-05-13

はじめての詩歌と季刊アンソロジスト




6/19(日)まで梅田蔦屋書店にて7周年フェア「はじめての詩歌 vol.3」が開催されています。俳人の津川絵理子さんの「とっておきの一冊」として『いつかたこぶねになる日』も並びました。「はじめての詩歌リーフレット」無料配付中。お近くの方はぜひ。

季刊アンソロジストが届いたので芥川龍之介の短篇ベスト10を読む。わたしの好きな芥川作品は「河童」と「歯車」なのだけれど、「河童」を挙げていた人はいなかった。「歯車」は吉村萬壱さんが選んでいた。このエッセイ、吉村さんがとんでもなく生きづらそうな日々を送っているようすが面白い。「歯車」を読むと「狂気の熱は冷やされ、限りなく死に近い平安が訪れる」という感じ、すごくわかるなあ。苦悩の向こう側に抜けられるんですよね。とはいえそこは廃人の一丁目一番地。そして四方一面は番外地の曠野なのであります。

理屈抜きの現実体験として、芥川の小説とウクライナが織り成す悲惨さに殆ど狂わんばかりに沸騰していた私の脳は、小説「歯車」によって初めてスッと鎮められたのである。こういうことか、と私は思った。被害妄想と希死念慮に満ちたこの異様な小説の持つ「光のない闇」によってのみ、狂気の熱は冷やされ、限りなく死に近い平安が訪れるらしかった。(吉村萬壱「ウクライナ情勢と芥川龍之介」)