2023-04-19

浜辺の先客、あるいは記憶と忘却





いつものように海に行く。

浜辺の先客たちは超現実的な配置かつ距離感でもって静止し、おのおの瞑想のひとときを過ごしていた。

わたしは石や硝子、流木や生き物を探し拾い、それらの助けを借りて遊ぶことにした。それは、自分が昔どこでなにをしていたのかを思い出してみる遊び、である。ちょっとした日常の出来事から、人生を左右する重要な事件まで、思い出してみる内容はさまざまだ。そしてこれがすごくむずかしい。いざやってみると、自分が自由に思い出せる記憶とはこんなにも僅かだったのか、と愕然とする。

風は岸の竿を揺らし、カモメのつばさをくすぐり、わたしの髪をそよがせていく。うねりのない海には日の光が照り映え、サングラスをかけていてもまぶしい。破けた風船のようなクラゲが渚に漂っている。眺めているとクラゲは、泡のカーテンをまとい、満ち引きに身をまかせ、斜めに伸びたり、直立したり、横になったりしていたけれど、やがて慎ましくも大回りを見せ、底づたいに海の向こうに引き返していった。

拾うものが見つからず、思い出すことにも疲れたので、わたしは一息ついて遠くを眺めることにした。すると、いったいどうしたことか、浜辺をどこまでも埋め尽くしている銀色の小さな石が、だんだん忘れ去られたものたちの無数の塚のように見えてきた。忘却の喩と化した浜辺の全景。その驚異を目の当たりにしたわたしはこんなふうに思ったーーさっきまでわたしは砂金採りみたいになけなしの記憶を漁っていた。でもどうだろう、目の前に広がる浜辺のこの清々しい石塚は。忘却ってとてつもなく輝いてるんだ、おそらくどんな記憶よりも。