2023-04-23

OTTAVIO RICCADONNA CANELLI





週末の朝、カフェで本を読む。その帰りしな、古道具屋に立ち寄った。その店は、けっこうな人気。いつもお客でいっぱいなので、またもやそうかと思いきや、開店と同時に入ったからか、ひっそりしていた。

さいきん古い油絵が欲しいなあとか、何かガラス製のユニークなものがあればと考えていて、よく覗きに来ている。でもいざ欲しいものが見つかっても、なかなか手が出ないのが古道具の不思議なところ。あれはどういうことなのか。なんとなく店主に話しかけづらかったりとか、まわりの熱気に圧されて買いそびれてしまったりとか。まあ、いいか、また今度にしようとついつい及び腰になってしまう。わかってもらえるかしら。しかし、この日は客もまばら。ほどよい静寂に助けられて、心をゆっくりと調えることができた。それで、よし買うぞと、前から狙っていたものを手に入れたのだ。

抱えて帰ってきた品は、透き通るガラスの酒瓶。ぶあつく、ぼってりとして、ワインがたっぷり運べるデミジョンボトルだ。把手がわりの片耳がつき、胴まわりのガラスの刻印には〈OTTAVIO RICCADONNA CANELLI〉と記されている。ひとつ10ユーロで、ふたつ買った。古いガラスのゆがみ、空気の化石のような、そのゆらぎのある存在感が本当に好きだ。ずっと眺めていられる、飽きることのない美しさ。このあたりでは、ガラスといえばムラーノ島の品が多いのだけれど、あんな上等なものでなくとも、いくらでも面白いものが転がっている。だって、ガラスって、少しも気難しくないんだもの。風情を解するとか、解さないとか、そういうことと関係なしに、誰でも一期一会の宇宙と対面できる。

リッカドンナはイタリア・ピエモンテ州カネッリの、この辺ではよく見るワイン。なにしろ国が違うとはいえ隣の州だ。ナポレオンがニースを獲るまでは同じサルデーニャ王国だった。