2018-12-28

ふりだしは、かりそめごとの





土曜日の読書」更新。大杉栄『日本脱出記』について書きました。これで2018年の書き物はおしまい。今年はめいっぱい遊んだ一年でした。来年はますます没頭して遊びたいです。

ところで、さいきんロビン・ギルさんと、狂歌についてあれこれメールでお喋りするという幸運に浴しました。藤井乙男監修『蜀山家集』付録の「狂歌小史」は藤井氏ではなく金子実英の作であることや、黒田月洞軒が鯛屋貞柳の兄弟弟子であることもご教示いただき、早速、過去記事を修正・加筆。ギルさん、ありがとうございます(画像は robin d. gill "Rise, Ye Sea Slung!")。

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五世川柳の「遊女五俳伝」を読んでいたら、面白い句があったので、いくつかメモ。

君は今駒かたあたり郭公  高尾

「君は今」のフレーズにめっぽう弱いんで、ツボに刺さります。ちなみにこれまでの人生最高の「君は今」は、こちらに書いた

ヌアヌ風そよ吹くあたり君は今、碁かマージャンか午後三時なり   赤松祐之

です。あと、この高尾が心に染まぬ客の相手をしながら詠んだ、

いのししにだかれて寝たり萩の花  高尾

も、芭蕉〈一つ家に遊女もねたり萩と月〉を思い出すまでもなく良い風情です。

ふり出しハかりそめごとのさつき雨  野風

これも知的でうっとりしちゃいます。「月が綺麗ですね」に見られるような男女の仲に限らず、人と人との距離をしつらえる際に言葉の機知を利かせるというのは、とても心躍る作法です。