2020-07-06

人間と犬





7月7日はリンゴ・スターの誕生日。彼、2年前の7月7日に近所のカフェで内輪だけの誕生日会をやったそうで、わあリンゴがいるよ!と延べ200人の住民が集まった、と記事になった新聞がこれ。たくさんの人が集まってくれたからと、カフェのテラスで数曲サプライズ演奏していました。

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『コドモクロニクル』で、須藤岳史「忘れられたラプソディ(あるいは蛇)」を読む。これは須藤さんが子供のころに体験した、名前と物との不安定な関係について書かれたエッセイなのですが、大人になってもその関係がうまくいかないことってあるなと思いました。

5年ほど前のある日、たまたま入った喫茶店の、腰を下ろした席の向かい側に、長い髪をした女性が後ろ向きに座っていたんです。女性は背もたれの高い一人掛けソファに腰を下ろし、ぴんと背筋を伸ばして、ちょうど後頭部だけが見える状態でした。で、その後頭部の髪がたっぷりと豊かな銀色で、ふんわりと波うち、この世のものとは思えない幽霊的な美しさだったんですよ。

わたしは、わあ、なんて綺麗な白髪だろう、しかも上品な雰囲気、こんな美しい女性がこの世にいるんだなあと感激して、こっそり&うっとりと凝視していたんです。そうして10分くらいしたとき、その女性がぱっとこちらを振り返った。

すると、わたしが人間だと思っていたのは、なんと犬でした。

10分間も人間と犬の区別がついていなかった自分も変だけど、そんなことよりも、人間として認識したものが振り返ってみると犬の顔をしていたことが深い心の傷になってしまって、あれからもう5年も経つのに、毎日毎日その瞬間のことを思い出して苦しくなるんです。みなさん、喫茶店のソファに座るアフガンハウンドにはくれぐれも注意してください。